この記事は、ロバート・コサラ「The State of Information Visualization, 2015」の原著者許諾済みの日本語訳です。
The State of Information Visualization, 2015
Original Article published by Robert Kosara.
Translated by Tatsuo Sugimoto.
どうやら2014年は、ビジュアライゼーションにおいて特筆すべき年ではなかったというのが既定路線のようです。先週、ポッドキャストData Storiesの2014年をふり返るエピソードを収録しましたが、みんな落ち込み気味に話しはじめました。とはいえたくさんの出来事がおきて、2015年にはさらなる展開をみせようとしています。
2014年が退屈な年だったとしたら、どうしてアンディ・カークが2014年前半をまとめて、なお2014年後半にも多くのよい事例を投稿できたのでしょうか。それに、ナーサン・ヨウの年間ベストデータビジュアライゼーションのリストについてはどうでしょう。そうです、いろいろとあったのです。もちろん新たなことも。
InfoVis学会
InfoVis 2014のクオリティには、いまでも敬服しています。このイベントはすばらしい研究内容にとどまらず、興味深い新発見を提示し、上手に紹介し、データやコードを利用できるようにした、全部をひっくるめたものでした。今までこれほど一貫性をもった質の高いイベントはありませんでした。
研究の多くの方向性も多様でした。新技術の研究はほとんどなかったものの、その多くはすばらしかったです。しばらくの間、多くの新技術は現実の問題を解決できていませんでしたが、進展しているようです。現在では、より多くの理論的傾向の研究(AlgebraicVisなど)や、将来有望な基礎的な研究(ヴェーバーの法則など)、長年の仮説を探究する研究(棒グラフの知覚、エラーバー、アニメーション演出など)などがあります。
何度も引用されている先行研究をしっかりと検証し、批評し、改良を加えていくことは、InfoVisにおいて有効かつ一般的な研究方法であるべきです。科学を進歩させるには、信念や概念を疑いつづけるしかありません。こうした研究が出てきたことはすばらしく、この傾向が続くことを願っています。
ストーリーテリング
昨年の頭、私はストーリーテリングの話をしましたが、2014年はまさにストーリーテリングにとって大きな1年でした。Tableau 8.2の「ストーリーポイント」機能だけでなく、データから興味深いストーリーをつむいでいく興味深い新しいアプローチが数多くあらわれました。
Bloomberg ViewのData Viewシリーズ(残念なことにすべてを一覧で見る方法がないようです)のような、新たなフォーマットも生まれています。まだ一般的な「スクローリーテリング」〔訳注:スクロールをつかったストーリーテリング〕フォーマットは登場してないようですが、とても迷惑で気まぐれな事例もありました。私は、スクロールはクリックよりも簡単だとするマイク・ボストックの主張にはまったく賛同しませんが、彼がこの手のものを作る人たちに役立つ助言をしていることは確かです。
モリッツ・ステフェナーと私自身の間で、ストーリーをめぐるちょっとした議論もありました。モリッツが口火を切って、私がそれに答えて、ストーリーの定義を加えました。最終的に、全体を整理したデータストーリーについてのData Storiesのエピソードになりました。
来たるべき年に、多くのストーリーテリングが登場することは間違いありません。ツールはよくなっていて、人々は実験をはじめてうまく働く面を学んでいます。ストーリーテリングについての学術的研究がもっと進むことも願っています。
学会以外のカンファレンス
InfoVisのようなカンファレンスといえば、どれも同じように、新しくないかもしれませんが継続的に開催されています。 Tapestry、 OpenVis、 Visualized、 eyeoなど、どのカンファレンスも異業種の人たちをつないでいます。人びとが語り合うカンファレンスはいいものです。
こうしたカンファレンスがうまくいっているのは(eyeoにはなかなか参加できないほど)、本当にすばらしいことです。そこには知的好奇心があります。意外な人たちも参加しているので、参加者の話も興味深いです。とくにジャーナリストは、これまでジャーナリズムのカンファレンス以外で話すことはありませんでした。みな面白い話題を持ち寄っていて、その話を聞きたがっています。
データジャーナリズムの夜明け
FiveThirtyEight。Vox。The UpShot。これらのサイトは、どれも昨年スタート(または再スタート)しました。全部うまくいった? ノー。ネイト・シルバーのニュースをオタク化する誓いはよいスタートを切りましたが、まだ道のりは長いです。Voxは間違いをおかしすぎましたし、率直にいって、スピードを落とし「公開優先でチェックは後回し」のアプローチを考え直す必要があります。数字に関するストーリーはなんでもすぐにデータジャーナリズムだと見なすカーゴ・カルト的なところもあります。
誤りや技術的なトラブルが多少あったにせよ、ジャーナリズムのなかにデータがあることは間違いなく、これからもっと視覚化されていくでしょう。
そのほか2015年に起こること
このほかに、コミュニケーションとデータを説明するためのビジュアライゼーションが、ジャーナリズム以外でも引き続き利用されることは明らかだとおもいます。分析がなくなることはもちろんありませんが、その結果の多くは一覧表などではなくビジュアルになるでしょう。ビジュアライゼーションの価値は、画面に向かっている一人の人間に限られるものではありません。
こうしたビジュアライゼーションは、アカデミック側でも取り上げられる存在です。この方向に向かって、特定のアイデアに着目して(分析中心だった)従来よりも実用的な多くの研究が発表されるとおもいます。
最後に、私はビジュアライゼーションの良書を待ち望んでいます。昨年、タマラ・マンツナーの本が発売されましたが、まだ読み終えていないので、かなり期待しているとしか言えません。コール・ナスバウマー、アンディ・カーク、アルベルト・カイロなど、執筆中の人たちもいます(後の2人の本は2016年に出版される予定ですが)。
2014年はインフォメーションビジュアライゼーションにとって悪くない年だったと思います。そして2015年以降はもっとよくなるでしょう。
執筆:ロバート・コサラ
ロバート・コサラは、タブローソフトウェアのリサーチサイエンティストで、コンピュータサイエンスの元准教授。研究テーマは、ビジュアライゼーションを使ったデータのコミュニケーション。ブログ書きのほかに、ランニングやツイートもしています。
A K Peters/CRC Press
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