2017-01-20 クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2 「見えない世界をつかまえる」

2017年1月20日(金)、佐賀市のアートスペースCASASAGAで開催された「クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2」にゲストで参加しました。

キュレーターで同僚の花田伸一さんの異分野対談(無茶ぶり!)企画です。会場のCASASAGA(カーササガ)は、花田さんいわく「日本初のキュレーター・イン・レジデンス」だそうです。

初対面のお相手、新部さんから易経の考え方を教えていただいたり、実際に占っていただいたりと、縁のなかった易の世界を垣間見ることができ楽しかったです。

易は陰と陽の組み合わせで2進数の世界。それぞれのパターンから言葉が出てきますが、その解釈は易者や相談者に委ねられているんですね。出た結果をさらに変化させることもあるようです。ああ、これは2進数のビット反転だなあとか、コンピュータに精通している人ほどハマりそうです。

個人的には印象に残ったのは、「易はxxなんです」と明け透けに語っておられたこと。気になる方は中洲のスナックで占ってもらってください。

1/20(金)レポート
クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2
「見えない世界をつかまえる」
ゲスト:杉本達應(情報デザイン)+新部健太郎(中国武術・易筮家)
 まったく異なるジャンルのゲストを招いてクロストークを行う“CASASAGAで逢いましょう”の第2回が1月20日(金)に開催された。ゲストは佐賀大学教員で情報デザインが専門の杉本達應氏、中国武術家であり易筮家(えきぜいか)である新部健太郎氏の2名をお迎えして、「見えない世界をつかまえる」と題してクロストークが行われた。東洋と西洋の世界の捉え方の類似や、人工知能の可能性など過去から現在まで歴史を横断・往復するような展開となった。
 杉本氏の実家は熊本県の美里町で駄菓子屋と印刷業を営んでいた。少年時代は、店の手伝いをして過ごし、振り返ってみると今の自分につながるようなルーツがあるかもしれないと話した。また自身がさまざまな分野を転々としながらも、よくわからないものに形を与え、世の中の物事を整理して伝える情報デザインに興味があるとのこと。
 新部氏は、中洲のスナックで出張占いをしており、杉本氏との意外な接点として、占いをする前の仕事はプログラムをしていた。易筮とは、いわゆる占いである。中国の殷から周にかけて成立した占いで、東洋の占いとしては、もっとも歴史の古いものだそう。占いとはそもそも、政治のための今を読むための重要なツールであった。今、目の前に起こっている混沌とした現象・情報を、どのように編集・カテゴライズし、自分(政治)に還元していくことが占いの原義であると、日本・中国での歴史の流れを踏まえ説明していただいた。
 易の占い方法は、言葉で説明するのはなかなか難しいが、単純化すると、陰の模様と陽の模様の組み合わせで、何通りもある中から偶然現れた目を、易での解釈と占う人に解釈を乗せて、2重になった解釈を伝えるというものである。これを易・占う人・占われる人との3者の構図での対話だとして、解説された。
 フリートークではAI(人工知能)の可能性や、易のオープンソース化、といった話題が話された。それらの話を通して著者が感じたのは、AIのように客観的事実としての情報だけで構築された行為に人間の共感、感動を呼ぶことは難しいのではないかということだ。易にしても、情報デザインにしても他者を動かすようなものには感情や主観をひとさじ入れることが不可欠だと話していたからだ。AIのありかたとして、人間の成り代わりではなく、人間を補完するようなパートナーとしてのあり方があるのではないかとトークの中で示された。
 今回のトークでは、世界の捉え方について非常に広い視点が飛び交い、過去から現在、はては未来まで包摂できるような、易の懐の深さに感嘆を抱くところとなった。また今回、筆者が印象に残ったのは、易の主観と客観の考え方で、フリートークにもあったように客観としてのAIとそれを解釈する主観としての人間の共存の方法を示唆しているようにも感じた。
 ちなみに蛇足ですが。トークの中頃で、新部氏による杉本氏の占いが行われた。杉本氏のお悩みは「今住んでいる家から引っ越すべきかどうか」。出た目は「一気にことを進めずに、こつこつ」「引っ越しはいずれの目標として、今ことを起こしてもむづかしいだろう」と出た。占いはまったく信じないと断言していた杉本氏は、果たしてこの結果を受け入れたのだろうか。
石原雅也(佐賀大学 地域デザイン研究科 修士1年)


クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2
「見えない世界をつかまえる」
ゲスト:杉本達應(情報デザイン)+新部健太郎(中国武術・易筮家)
佐賀市の間借りアートスペース「CASASAGA」で異分野同士のゲストを招いて繰り広げられるクロストーク企画。第2回は情報デザインと易経の出会い。見えないものを見る/見せるには? あるいは見えないままに取り扱えるか? そもそも世界を見るとは? 台本ナシの五里霧中トーク、光明は見えるか?
日時:2017年1月20日(金)19~21時
会場:CASASAGA(佐賀市神野東4-4-8)
モデレーター:花田伸一(キュレーター)
参加費:500円(1ドリンク付) 申込不要
P無(JR佐賀駅周辺にコインP有)
杉本達應/情報デザイン/佐賀大学芸術地域デザイン学部准教授。1975年熊本県生/佐賀市在住。2016年東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。福山大学講師、札幌市立大学講師などを経て現職。デザイン、メディアアート、ワークショップデザイン、メディア研究などの複数領域を移りつつ活動。現在はデータ可視化の技術と文化に関心をもつ。共著書に『メディア技術史』(北樹出版)。共訳書に『Processing』『Generative Design』(ビー・エヌ・エヌ新社)。
新部健太郎/中国武術・易筮家。1977年函館生/福岡市在住。NPO法人「福岡気功の会」指導員。東京操体フォーラム相談役。壺中堂中国武術教室主人。来福以来、気功および中国伝統武術、易学を学ぶ。一読書人として東洋思想を漫遊しながら、中国武術「八卦掌」の教授、易経講座、中洲スナック占い師、九州大学国際部「JTW」プログラム外部講師などを遍歴。

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