「ネット時代のフォークロア創造」 モバイルコミュニケーション研究会に参加しました

2021年5月15日、オンラインで開催された情報通信学会モバイルコミュニケーション研究会に討論者として参加しました。貴重な事例報告をきく機会をいただきました。研究会のみなさん、ご縁をいただきありがとうございます。

タグチヒトシさん
杉本

アートグループGRINDER-MANのタグチヒトシさんが演出された現代芸能『獅子と仁人』の報告にコメントを寄せました。『獅子と仁人』は、沖縄の獅子舞、音楽、唄、ダンスパフォーマンスに加え、リアルタイムCGが合成されたライブ映像です。新型コロナウイルス感染拡大によって本来の公演は中止されたものの、ストリーミングライブ配信として新たなかたちでの公演が試みられたとのことです。

本作は、現代的な装いの獅子のパフォーマンスなど、見どころの多い作品です。それだけでなく、舞台上を動き回る大胆なカメラワークでライブ配信する意欲的な試みでもあります。2020年、コロナ禍で次々に舞台公演の場が失われていく大きな制約のなか、表現者が新しい見せ方をつかんでいく過程を見ることができ、勇気づけられました。また、テクノロジーを駆使しながらも誇示しない作品構成のバランス感覚にも唸らされました。とくに再撮影版ではCGの要素を減らしていることに感心しました。

沖縄の獅子舞という伝統文化に、現代的な技術が重なることで、あらたな魅力を獲得していました。コロナ禍で伝統文化の継承が危惧されているなか、このような試みで伝統が生き続けていることに注目します。ライブ配信では海外からのアクセスも多かったそうで、地理的な条件にしばられないグローバルな展開が期待できます。

わたしからはタグチさんに、今後の展開についてお訊ねしました。コロナ禍はいつか終息し、パフォーミングアーツの公演は息を吹き返すでしょう。ただし、長期間これまでの公演形態が制限され、ライブ配信が身近になったという大きな変化を存在しなかったことにはできません。今後は、劇場に足を運ぶ人だけでなく、スクリーン越しの観賞を求める人たちも増えていくのではないでしょうか。そのとき、多くの観客と同時に観賞するという体験がどのように変わるのかに興味を抱きました。その体験をデザインする演出家の果たす役割はより重要になりそうです。

もう一人の討論者の藤本憲一さんと司会の伊藤耕太さんからは、お二人とも本作の世界観や読み取れる物語からつぎのような指摘がありました。藤本さんは、本作から、「脱魔術化」(ウェーバー)した合理的社会ではなく、「再魔術化」した多神教的世界を見出したそうです。伊藤さんは、本作から読み取られる物語から、ベンヤミンが「複製技術時代の芸術作品」で論じた礼拝的価値から展示的価値への移行から、再び礼拝的価値へ回帰しているのが興味深いとおっしゃっていました。

今回の研究会がオフライン開催だったら、研究会メンバーの方々をまじえて議論が盛り上がったはずです。それがかなわなかったことは残念でしたが、つぎに直接お会いできる機会を楽しみに待つことにします。

『獅子と仁人』は、再撮影された映像版がVimeoでオンデマンド配信されています。レンタルまたは購入できますので、関心のある方はぜひご覧ください。

Vimeo配信の予告編

The Ancient Lion and Modern Man – 現代芸能『獅子と仁人』 | Facebook


2021年度 第1回モバイルコミュニケーション研究会のお知らせ

テーマ: ネット時代のフォークロア創造〜リアルアイムCGを用いたAR表現を題材に
日時:2021年5月15日(土) 13:00~15:00
場所:オンライン開催
報告者:タグチヒトシ(演出家)
司会:伊藤耕太(マーケティングディレクター、関西大学非常勤講師)
討論者:藤本憲一(武庫川女子大学教授)・杉本達應(東京都立大学准教授)

概要
報告者であるタグチヒトシ氏がコロナ禍において演出を担当した現代芸能『獅子と仁人』(ししとひと)は、身体表現とデジタルテクノロジーの融合による、オンラインでのみ完成する舞台作品かつ映像作品として公演されました。獅子舞、ダンス、生演奏、CG合成によるAR表現がオンラインでリアルタイムに融合し、沖縄から世界への配信を通じて鑑賞する観客は、舞台上に立っているような臨場感の中で、しかも肉眼で見るのよりもリッチな映像として、作品世界を体感することができます。本研究会では、本作を中心としたタグチ氏の実践と、インターネットやデジタル技術や駆使した映像体験で試みるフォークロア(伝承)創造の可能性について議論したいと思います。

(報告者プロフィール)
タグチヒトシ(演出家)
1973年横浜市出身、筑波大学芸術専門学群総合造形学科卒。演出・振付を駆使して生みだすのは「いま・ここ」の身体表現。2008年に株式会社イッカクを設立。現代という時代を創造し、表現と社会の新たなかかわりあいについて、その考察と実践を進めている。文化庁芸術家海外研修でニューヨークに滞在(2016年)。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品「HERO HEROINE」(2019年)。
『獅子と仁人』は、沖縄県宜野座の創作エイサーLUCKと、アートグループGRINDER-MAN、ビジュアルデザインスタジオWOWのコラボレーションによって、2020年11月に宜野座村文化センターがらまんホールからストリーミング配信にて発表。2020年12月には文化庁芸術文化収益強化事業に採択され、2021年2月に再収録。2021年4月から新版「The Ancient Lion and Modern Man」がVimeo On Demandにてオンデマンド配信中。
https://www.facebook.com/shishitohito/

参加費: 無料
申込方法: 以下のサイトよりお申込みください。

モバイルコミュニケーション研究会|情報通信学会 -JSICR-

エキソニモの作品は死なない アン・デッド・リンク 東京都写真美術館

potariに寄稿した記事です)

東京都写真美術館で開催されているエキソニモの個展を堪能してきた。展覧会のビジュアルは、文字による構成が巧みな水戸部功のデザインだ。

エキソニモ UN-DEAD-LINK アン・デッド・リンク
インターネットアートへの再接続
東京都写真美術館(目黒区)

エキソニモをご存知だろうか。東京、福岡を経て、現在はニューヨークを拠点としている二人組のアーティストだ。活動する分野は脱領域的だが、一般的にネットアートやメディアアートとよばれる領域にちかい。

メディアアートはメディア技術を使っているために、ともすれば斬新な技術をいちはやく採用する「工学的」な表現や、エンターテインメント産業と結びついたサービスや商品の開発に向かいがちだ。メディアアート単体でマーケットが成り立ちにくい日本では、こうした傾向が顕著だ。そのなかでエキソニモは独自の活動をつづけていて異彩をはなっている。

エキソニモは、ネットやデジタル機器を表現の媒体にしながらも、決して仮構の世界にとどまろうとしない。むしろリアルな物質や身体、生死など、現実空間をつよく意識している。深刻な側面もありつつ、ユーモアもアイロニーもこめた絶妙なバランスのうえに成りたった作品が魅力だ。

こうしたエキソニモ作品の特徴は展覧会の会場構成にもあらわれていた。展示室の床面には5色のLANケーブルが床を這い回っている。5つの色は、作品のキーワードに対応し、それぞれインターネット、プラットフォーム、インターフェース、ランダム、境界をあらわしている。作品の展示場所まで到達したケーブルの色が、作品のタグを示しているという仕掛けだ。会場内を歩き回るには、床にあるケーブルをよけ、またがっていかなければならない。ふだんならスクリーン上の「リンク」をクリックやタップするだけで航行(ナビゲート)できる仮想的なサイバー空間が、ここでは足を使って慎重にたどる現実空間に置き換られている。

展覧会タイトルの「アン・デッド・リンク」には、古いWebページへの参照ができなくなった「デッドリンク」を再接続するという意味が込められている(ちなみに同名の作品もある)。このタイトルの通り、かなり古いものもふくめエキソニモの歴代の作品がよみがえっている。懐かしいブラウン管モニターも、ここでは何事もないように動作していてちょっとしたタイムスリップ感が味わえる。

ひとつだけ作品を紹介したい。《Natural Process》(2014)は、Googleのトップページを絵画にするプロセスを記録した作品だ。インターネットの象徴的イメージであるGoogleのトップページを、そっくり巨大絵画として描き、その制作過程をWebカムを通じてネット中継する。ネットのイメージをアナログ化すると同時に、デジタルの世界にふたたび戻している。完成した絵画は、Google社が購入し所有している。今回の展覧会で作品を借りようとしたが、新型コロナウイルスの影響でオフィスに立ち入ることができず、借りられなかったという。そのため展覧会には絵画そのものはなく、経緯を説明したテキストなどが掲示されている。

ところでGoogleは現在世界シェア1位のウェブブラウザ「Google Chrome」を公開している。しかしこの作品が作られた当時、Chromeは存在していなかった。現在結果的に、この絵画には競合製品である「Internet Explorer」のウィンドウが描かれたことになる。そのため、いまではGoogle社内でも展示されていないようだ。もともとこの作品はプロセスを記録したものであり、その旅に終わりはなく現在も進行している。サーチエンジンやウェブブラウザの浮沈とともに、作品の運命も変わっていくのかもしれない。

メディアアートは刻々と変化する時代状況を反映している。エキソニモのように存命の作家がつくる新しい作品を、同時代に体験できるのは貴重だ。今回の個展では、1990年代の作品から最新作までがならんでいる。世のなかのデジタル機器は変化し陳腐化をくり返しているのに、刹那的にもみえるエキソニモの作品がむしろ死なずに生き残っていることに気づかされた。

大規模な回顧展だが、すべての作品・プロジェクトが網羅されてはいなかった。可能ならば、個人的なメディア経験をふりかえりながら、エキソニモの完全な「アン・デッド・リンク」を一度に体験したくなった。

展覧会は10月11日まで開催中。ネット会場でも作品を体験できる。

『超ビジュアル訳 ニーチェの言葉』をつくりました

このたび、すぎもと組では2冊目の技術同人誌『超ビジュアル訳 ニーチェの言葉:p5.jsでうたう「深夜の鐘の歌」』をつくりました。

特設ウェブサイトはこちら。

https://visualized-nietzsche.tumblr.com/

技術書典9で頒布します。

https://techbookfest.org/product/5727504515989504

この本の特徴

ずばり!
・ニーズのない本です(明日の仕事に役立ちません)
・右綴じ・縦書きの本です
・ニーチェの入門になる本です
・p5.jsをすこし学べる本です
・紙で読んでいただきたい本です(電子版はおまけです)
……ようはヘンな本です。

「超ビジュアル訳」って何?

超ビジュアル訳とは、テキストをビジュアルに翻訳すること。本書では、ニーチェの詩の一行一行を解釈し、想像したイメージをつくりあげました。どのイメージも文字を構成したタイポグラフィ作品です。

今回も編者のわたしの呼びかけに応じた学生といっしょに作りました。表紙、本文のイメージ、テキストは、ほとんど学生が制作しました。わたしはブックデザインに力をいれました。

目次

まえがき

第一部 作品篇
  深夜の鐘の歌
  ひとつ!
  ふたつ!
  みっつ!
  よっつ!
  いつつ!
  むっつ!
  ななつ!
  やっつ!
  ここのつ!
  とお!
  じゅういち!
  じゅうに!

第二部 解説篇
  深夜の鐘の歌
  「深夜の鐘の歌」解説

第三部 技法篇
  p5.jsとは
  作品概要とコード解説

あとがき

Zarathustra’s Rundgesang
ニーチェ略歴
ブックガイド
編著者かく語りき

技術書典すごい!

さて、前回の技術書典8は急遽オンライン開催になりましたが、今回ははじめからオンラインイベントとして開催されます。
イベント運営の目玉として、作り手にも読み手にもやさしい変更がたくさんありました。出展料が無料、販売手数料ほとんどの場合無料、紙の本の送料も無料。前回、主催者にはおおきな損失があったはずなのに、こんなすぐに新機軸が発表されるなんてびっくりです。これでイベントが成り立つのか心配ですが、きっと大丈夫なのでしょう。ありがたくこの場を使わせていただきます。

既刊もどうぞ

すぎもと組の既刊『ばぶでもわかるおぶざばぶる D3.jsとObservableではじめるデータビジュアライゼーション超入門』もひきつづき頒布します。こちらもどうぞよろしくお願いします。特設ウェブサイトはこちら。

https://observable-babies.tumblr.com/

技術書典9のページはこちら。

https://techbookfest.org/product/5174238650564608

技術書典9のp5.js本

技術書典9にでているp5.js関連本は、レオナさんの2冊が注目です!

できるだけ毎日続けるためのデイリーコーディング戦略 [第2版]
https://techbookfest.org/product/6000948635762688

2時間でクリエイティブコーダーになる本 p5.jsではじめるアートプログラミング
https://techbookfest.org/product/5666883730669568

ぜひお求めください!

ニーチェ本は、あまり世の中に似たものがないヘンな本です。読んでくれる人がどれほどいらっしゃるか想像がつきません。興味をもたれた方はぜひお求めください。印刷費をたっぷりかけて紙の本をしっかり作りました。でも赤字覚悟でお安くしています。
お読みになった方から感想をいただけることをたのしみにしています。

技術同人誌『ばぶでもわかるおぶざばぶる』をつくりました

このたび、すぎもと組は技術同人誌『ばぶでもわかるおぶざばぶる』をつくりました。すぎもと組とは、わたしが授業連絡などでつかっているSlackのワークスペース名です。決してあやしい団体ではありません。

すぎもと組編,2020,『ばぶでもわかるおぶざばぶる : D3.jsとObservableではじめるデータビジュアライゼーション』すぎもと組.

技術書典応援祭(オンライン開催、2020年3月日−4月5日)

つくった経緯

この同人誌は、「技術書典8」にはじめて出展する予定でした。新型コロナウイルス感染症のため開催中止となり、代わりに開催されている技術書典応援祭に出展しています。

技術書典は、来場者1万人規模の大きな技術同人誌の即売会イベントです。2018年秋、わたしは出張の合間に技術書典5に参加者として訪れました。開場前からの長蛇の列に、身動きがとれないほどの会場内の混雑ぶりに驚きながら、こんな場に参加するなら、出展者として参加したほうが楽しいだろう。そう思いましたが、地方在住者(当時は佐賀在住)としては、東京でしか開催されない技術書典への出展は現実的ではありませんでした。もちろん地方から参加しているサークルも多数あるとはおもいますが。

それから1年──。2019年の秋、わたしは東京に引っ越していました(!)。メールマガジンで技術書典8サークル参加申込みの締切が迫っていることを知り、出展することを思いついたのです。締切前日(2019年11月30日)に、いっしょに同人誌作ってみないかとデータ可視化の演習授業の受講生に呼びかけました。すると数人の学生が手をあげたので、翌日ぎりぎりに申し込みました。12月15日、当選発表があり、参加費を支払って制作をはじめました。

2月中旬にできあがったので、制作期間は約3か月です。ただし実質はもっと短い短期集中で作りました。学生は第2章の作例を担当し、わたしは前半の第1章を担当しました。第2章の内容や、タイトル、カバーデザイン、イラストなどは、どれも学生の発案です。

目次

はじめに
第I部 入門編
第1章 D3.js をはじめよう
 1.1 D3.jsとは
 1.2 はじめてのD3
 1.3 D3 vs.jQuery vs. JavaScript
第2章 Observable 入門
 2.1 Observableとは
 2.2 ノートブックの編集
第3章 Observable の JavaScript
第4章 ノートブック・ギャラリー
第II部 実践編
第5章 シンプルな表
 5.1 ここで作れる表
 5.2 2次元配列の場合
 5.3 オブジェクトの配列の場合
第6章 ロリポップチャート
 6.1 ここで作れるグラフ
 6.2 データの準備
 6.3 チャートの作成
第7章 折れ線グラフ
 7.1 ここで作れるグラフ
 7.2 データの準備
 7.3 チャートの作成準備
 7.4 チャートの作成
第8章 ドーナツチャート
 8.1 ここで作れるグラフ
 8.2 データの準備
 8.3 チャートの作成
第9章 箱ひげ図
 9.1 ここで作れるグラフ
 9.2 データの準備
 9.3 チャートの作成
第10章 ヒートマップ
 10.1 ここで作れるグラフ
 10.2 データの準備
 10.3 チャートの作成
第11章 地図
 11.1 ここで作れる地図
 11.2 データの準備
 11.3 地図の作成
著者紹介
おわりに

誰のための本か

この本で紹介しているのは、JavaScriptのライブラリD3.jsと、JavaScriptの共有ノートブックWebサービスのObservableです。データビジュアライゼーション超入門と謳ったとおり、はじめてデータからビジュアルをつくってみたい初学者のためのガイドブックです。そのため本書で取り扱っているのは、棒グラフなどの基本的なチャートです。複雑なデータビジュアライゼーションではありませんが、データセット(CSVやJSONなど)があれば、ちょっとしたスケッチを描くように可視化できるので、ぜひ体験していただきたいです。

Image from Gyazo
わたしのObservableノートブックは200個を超えています。

デザイナーの方でも、エンジニアの方でも、データの可視化にすこしでも興味のある方は、ぜひ読んでいただきたいです。また、学生やお子さんも、プログラミングの入門として気軽に読んでいただけます。

感想は、ハッシュタグ #ばぶでもわかるおぶざばぶる #ばぶ本 でお待ちしています。続編の希望があれば、動的なデータの取り扱いや、ボタンなどをつかったインタラクションなどについても書いてみたいです。

同人誌づくりは楽しい!

はじめて技術同人誌をつくってみて、よかったと思ったことがいくつかありました。

第一に、誰かといっしょにつくる楽しさがあります。今回は、学生といっしょに作ったことでなんとかできあがりました。ひとりでつくっていたらモチベーションを維持できず、途中で頓挫したかもしれません。

第二に、テーマとなる技術の勉強になります。執筆した学生は、「文章で伝えるって難しいですね」とつぶやいていました。何となく理解しているつもりのことでも、伝えるために文章に起こすと、意外と分かっていなかったりします。だれかに教えるためには、まず書き手が学ぶ必要があるんですね。わたしも内容に間違いがないように、D3.jsのソースコードを確認することがあり、大いに勉強になりました。

第三に、出版物の理解が深まります。同人誌でも商業書籍でも、1冊の本が生まれるまでには、企画、執筆、編集、デザイン、組版、印刷、製本、営業(宣伝)、流通、販売など、数多くのプロセスがあります。同人誌を作ることは、そのプロセス全部に関われます。世の中に流通している本にも、ひとつひとつ制作のストーリーがあることに思いをはせると、本が生まれることへの感謝の気持ちが生まれました。

今回、同人誌最大の醍醐味である対面販売の機会がなくなったのは残念ですが、同人誌づくりは楽しかったです。技術書典に関心のある人は、ぜひ何か作ってみてはいかがでしょうか。複数人で書くのが気楽でよいとおもいます。丸ごと1冊書ける人でも、デザインや校正など他者の協力をもらいながら作ることを強くおすすめします。その方が完成度も上がりますし、なによりつくる過程を楽しめますから。

制作プロセスについては、別途エントリーをあげる予定です。

2018-10-13「2018年度日本デザイン学会秋季企画大会」で発表しました

2018年10月12〜14日に九州大学大橋キャンパスで開催された「2018年度日本デザイン学会秋季企画大会」で、2件の発表をしました。

1つ目は、10月13日のライトニングトーク発表です。

杉本達應「『仮想書棚』の試み」

2つ目は、10月14日の第5支部研究発表会の口頭発表です。

杉本達應「データ可視化の制作プロセスの共有を支援するツールの検討:『データ駆動型デザイン』を学習する技術的環境」

2018-09-16 「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催しました

2018年9月16日、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターで「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催しました。共催の「ももち浜TECHカフェ」さんに博多駅至近の会場をご提供いただきました。

開催概要
2018-09-16 「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催します – lab.sugimototatsuo.com

多様な領域からご参加いただき、ありがとうございました。昨年から主宰しているDxD研究会をはじめて公開しました。データビジュアライゼーション領域で活動されている山辺さん、矢崎さんをお招きして、それぞれの実践事例など話題提供いただきました。当日は時間が足りず、参加者をまじえた十分なディスカッションができなかったことを反省しています。またデータビジュアライゼーションをテーマのイベントが開催できればと思っています。

(写真:牛島清豪さん、矢崎裕一さん、杉本達應)

当日の発表資料を置いておきます。

データビジュアライゼーションの制作方法を学ぶ
杉本達應

アート+サイエンス、ビジュアライゼーションの現在―産学官連携と実践
山辺真幸さん

参加者限定で共有しました。

見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ
矢崎裕一さん

こちらのリンクをご覧ください。

2018-09-01 SMAARTアートマネジメントセミナーを開催しました

2018年9月1日、佐賀大学でSMAARTアートマネジメントセミナーを開催しました。今回は、わたしが企画を担当した講座です。

博報堂「生活圏2050」プロジェクトリーダー、鷲尾和彦さんをお招きし、「未来を育む都市:オーストリアの中規模都市の事例を通して」と題してレクチャーをしていただきました。

アートマネジメントセミナー

今回のテーマは、「アルスエレクトロニカ」です。アルスエレクトロニカは、世界中のメディアアート関係者が知る、その世界では有名な芸術祭です。先端的なアートや表現が集結するというイメージですが、今回のお話は文化政策や都市計画の側面が中心です。お話は多岐にわたりましたが、心に残ったポイントをこの記事でまとめます。

Ars Electronica

この芸術祭が開催されているのはオーストリアのリンツ市。人口約20万人の都市です。オーストリアは人気の観光地ですが、日本語の観光ガイドにリンツ市の情報はほとんど載っていません。もともと鉄鋼業が盛んな工業都市として発展してきたまちで、ウィーンやザルツブルクのような国際的知名度はありませんでした。ところが現在のリンツは、文化産業の都市へと政策転換しています。そのきっかけになったのが、1970年代に市民が主体的にはじめたテクノロジー・アートのお祭りだったそうです。

オーストリアはハプスブルク帝国でしたが、今では小国にとどまっています。リンツはヒトラーの故郷で、彼が都市改造を計画した町でもあります。第二次世界大戦中、近郊にはナチスのマウトハウゼン強制収容所があり、多くの収容者が過酷な労働を課されてしました。戦後は、鉄鋼業の大規模工場によって、ひどい公害問題に悩まされます。近年では、ヨーロッパの「玄関口」として多数の難民が入り込んできています。鷲尾さんによれば、個人の力ではどうにもならない、いわば「大きな力」に左右された「小さな」町であることが、この町の特徴なのです。そのなかで立ち上がった市民主体の芸術祭には、工業都市にいる技術者たちの矜持、反体制的な音楽が生まれる風土も関係しているといいます。芸術祭が、著名なアーティストや有名企業を起用するような「権威」や「抑圧的なパワー」の場に偏らないように、草の根的なプロジェクトも同時に展開し、参加者に「どちらの未来がよいとおもう?」と問いかけるような仕掛けをほどこすといったバランス感覚にも感心させられました。

アルスエレクトロニカでは、国際コンペティション「Prix」(プリ)など、いろいろな取り組みがあります。なかでも印象的なのが、アルスエレクトロニカ社という公社を設立し、事業もてがけていること。アルスエレクトロニカを地方再生の成功事例としてきくと、「日本(の行政の仕組み)ではできない」と感じてしまいます。表面的に「まねしよう」とすると確かにそうかもしれません。鷲尾さんは、安易に真似ようとする風潮に釘を刺し、地中の根を含めた樹の断面図をみせました。「外からおいしそうにみえる果実だけを採って移植しても、ちがう土地でうまく育つわけがない。その土地の土壌(歴史文化)にふさわしいものを根っこから育てていく必要がある」と。

「次の世代のために自分の町をどうしたいですか?」──最後の質問には、小さくても始められることがあるんじゃないですか、という呼びかけに聞こえました。

鷲尾さんは今年もアルスエレクトロニカ・フェスティバルに行かれるとのこと。渡航直前のお忙しいなか、佐賀で貴重なお話を聞かせていただきありがとうございました。

2018-09-16 「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催します

2018年9月16日、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターでデータビジュアライゼーションに関するトークイベントを開催します。
杉本達應研究室と「ももち浜TECHカフェ」の共催です。

参加申し込みはこちらから。
https://tech-cafe.connpass.com/event/98246/

近年、多様なデータを起点にチャートなどの視覚的表現を生成する「データビジュアライゼーション」が注目されています。この領域をテーマにした「DxD研究会」が福岡で初のトークイベントを開催します。データビジュアライゼーションの教育、実践について話題提供し、この分野に興味をもつみなさんと意見交換します。

福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター 5階プレゼンルーム
福岡市博多区博多駅東1丁目17-1(福岡県福岡東総合庁舎5階)
※博多駅筑紫口から徒歩5分
参加無料
イベントページでお申込みください。受付の際に名刺を頂戴します。

プログラム

データビジュアライゼーションの制作方法を学ぶ
杉本達應(佐賀大学芸術地域デザイン学部 准教授)
大量のデータが行き交う現在、デザインで学ぶべきものが大きく変化しました。初学者に向けた「可視化のガイドライン」(作成中)を紹介します。

アート+サイエンス、ビジュアライゼーションの現在―産学官連携と実践
山辺真幸(多摩美術大学情報デザイン学科 非常勤講師/慶應塾大学大学院 政策・メディア研究科 後期博士課程)
アートとサイエンスにまたがる2つの「データビジュアライズ」の現在について、大学・企業での取り組みや実践を交えて紹介します。

見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ
矢崎裕一(Data Visualization Japan ファウンダー/Code For Tokyo 共同代表/多摩美術大学情報デザイン学科 非常勤講師)
人類が何を可視化してきたのか、過去の一部を駆け足で振り返りながら、今後の発展可能性について話題提供します。

主催 佐賀大学 芸術地域デザイン学部 杉本達應研究室
lab.sugimototatsuo.com
共催 システム開発技術カレッジ
(公益財団法人 福岡県産業・科学技術振興財団)

本研究会はJSPS科研費JP16K00462の助成を受けたものです。

2018-06-29 ポータルサイト・ミーティングが始まりました

佐賀エリアの文化芸術情報を発信するポータルサイトづくりのプロジェクトがスタートしました。これは、佐賀大学芸術地域デザイン学部主催の、SMAART(佐賀モバイル・アカデミー・オブ・アート)の取り組みのひとつです。

今年度のSMAARTのプログラムでは初回のイベントになります。ポータルサイトづくりの企画じたいは、2017年9月に実施した講座とワークショップにスタートしています。公式プログラムは1日だけでしたが、じつはその後も2017年10月、2018年3月、4月、5月と、有志の方とミーティングを続けていました。本年度のミーティングには、残念ながら参加できない有志メンバーもいらっしゃいますが、これまでの意見もいかしながら進めていきます。

2018年6月29日、ポータルサイト・ミーティングと講座を開催しました。会場は、肥前さが幕末維新博覧会のパビリオンのひとつ、オランダハウス(旧佐賀銀行呉服町支店)です。この日は、九州・山口のアート情報サイト、アルトネ編集の笠井優さんに話題提供いただきました。アルトネは、アート関係に興味のある女性が多く利用しているとのこと。コンテンツの量や更新頻度など、サイト運営の細かな配慮をうかがうことができました。その後、メンバー全員でふだん使っている情報サイトについて意見交換しました。

ポータルサイトは、今年度は試行版、来年度に本格開設を目指します。事前募集であつまった15名の編集部メンバーとともに、どんなサイトを作りあげることができるか、楽しみです。

SMAARTサイトのレポート:
第1回 ポータルサイトミーティング 「アート情報サイトの編集」 – SMAART Saga Mobile Academy of Art

2017-11-19 Floating Urban Slime / Sublime クリエイターズ・トーク

広島県のアートギャラリーミヤウチで、 クロスジャンルの展覧会「Floating Urban Slime / Sublime」がはじまりました。

わたしは、ディレクターの稲川豊さんと共同で、オンラインのカウントダウン・プロジェクト「FUSS Countdown」に参加しました。コントリビューターが提供したテキスト、イメージを組み合わせ、会期前の81日間かけて、毎日1つのコラージュ・イメージを投稿しました。日々のイメージは、単体では意味不明。謎めいた展覧会を予告する謎めいたカウントダウンとして制作しています。英語と日本語のテキストの断片があらわれていますが、おそらく多くの人が母語に近いことばだけを読むでしょう。もう一方のことばは対訳なのか、あるいは呼応しあっているのか──。展覧会場では、すべてを通して見れますので、あらたな見方ができるはずです。

#floatingurbanslimesublime #countdown #2days #work #シルバー #sarcasticface #都市のエラー #megumiiwafuchi #マーティントーマス #yutakainagawa #ニコラモリソン

Floating Urban Slime / Sublimeさん(@floatingurbanslimesublime)がシェアした投稿 –

このカウントダウンのプロセスでは、ことなる種類のテキストを断片化しました。そこではテキスト特有の力をまざまざと感じさせられました。どのような表現方法をとったオリジナルテキストであれ、断片化されてもなお、消すことのできない書き手の痕跡が浮かび上がってきたからです。テキストを切り刻み、つなぎあわせる「カットアップ」という創作手法を世にひろめた、ビート・ジェネレーションの作家ウィリアム・バロウズのことば通りだと再確認します。

 「時」のなかにきみをとどめる言葉の糸を切断せよ……鋏、ナイフを用いて、いくつかにちょんぎれ……「空間」にその糸を展べよ。きみ自身が書いた一頁、手紙であろうと、またきみ以外のどんなやつの書いたものでもいい、死んでいようと生きていようとかまわぬ。一頁、それより少くても多くてもいい、そいつを小間切れにしてしまえ。真中を切断せよ。両端を十字に切り裂け……切断した部分を配列し直せ……出来上ったメッセージを記せ……

どんなに切り刻んで配列し直しても、もとの言葉を書いた人間はそこに存在する……どんなにずたずたにしてもランボオはランボオだし、メルヴィルはメルヴィルである……シェークスピアはシェークスピアの言葉で動く……といった次第で、ランボオの言葉を切り刻み、ランボオの言葉を喋べり、ランボオのように考える人は、誰でもランボオになれるのである……加えて適当に肉をつけることですな。あらゆる死んだ詩人や作家たちは、かくしてそれぞれの宿主のなかに甦る。

(「ウイリアム・バロウズの『殲滅者』」・『鮎川信夫全集IV』思潮社、2001所収)

展示会場は、まるでインストールの最中のようで、渾沌としていました。あたり一面に大小さまざまな角材や板材や布。それらが、床や壁に置かれていたり、宙に浮かんでいたりして、作品の鑑賞をさえぎっているかのようです。いやひょっとすると、これら全部が展示物なのかもしれません。でもそうだとしても、それぞれの物体が作品なのか、什器なのか、仮組みの構造物なのか、判然としません。作品一覧のペーパーは用意されていますが、どうやら複数の作品が絡んで置かれているようで、だれの作品なのか、はっきり見極めることすら困難です。キャプションや解説パネルのようなものは、当然のようにどこにもありません。この展示会場に野心あふれるアーティストが訪れたら、こっそりと自分の作品を紛れ込ませたり、なんらかの痕跡をのこす衝動にかられるかもしれません。

とはいえこの奇妙な会場は、ただ乱雑をきわめているとは言い切れない不思議な一体感を醸し出しています。素材の質感や細部に集中していても、同時に全体の配置や関連も気になります。カメラで撮影するなら、いくつもの種類のレンズを必要とする感じ。面倒なようで意外とたのしくなってきます。歩き回っているうちに、会場は一定のトーンを帯びはじめ、展覧会の性格を強く主張しているようにみえるのです。その主張は、確実な真実を求めてもたどりつきにくい、フェイクニュースあふれるインターネット社会を反映しているのかもしれません。確かなことはわかりませんので、そのあたりは鑑賞者の解釈にゆだねられているのではないでしょうか。

さて、オープニングは体調不良で残念ながら参加できなかったのですが、初日のクリエイターズ・トークに行ってきました。アートギャラリーミヤウチの今井みはるさんに久しぶりに再会しました。

このクリエイターズ・トークに驚かされました。参加作家が自分のことばを語るのかとおもいきや、さにあらず。このイベント自体が実験的パフォーマンスだったのです。

オーディエンスは、会場内の椅子にそれぞれ別々の方向を向いて座っています。Macが読み上げる自動音声のテキスト、参加作家による指示されたテキストの朗読、ハミングの多重奏などが、いくつかのスピーカーから何重にも遅延して耳に届きます。音声の発信地である、ガラス張りのオフィススペースはラジオの公開収録スタジオのようで、オーディエンスによる集団聴取のような不思議な空間ができていました。

#floatingurbanslimesublime #たゆたう粘縮

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今回ふだんの活動とはことなる人たちの創作にふれることができ、おおいな刺激をうけました。

Floating Urban Slime / Sublime
http://miyauchiaf.or.jp/agm/exhibition_fuss.html

会場:アートギャラリーミヤウチ(広島県廿日市市宮内字高通4347番地2)
会期:2017年11月18日|土|- 2018年1月8日 |月・祝|
開館時間:11:00 – 18:00(最終入館は17:30)
会場:2F展示室
休館日:火・水曜日、12月30日−1月3日
観覧料:一般300円 [200円] 学生200円
*[ ]内は10名以上の団体料金、高校生以下または18歳未満・各種障害者手帳をお持ちの方は無料

参加クリエーター(居住国):
稲川豊(日本)|イワフチメグミ(日本)|We+(日本)|ウォン・ピン / 黃炳(香港)|小野環(日本)|勝目祥二(STUDIO NIJI)(日本)|シュシ・スライマン(マレーシア)|ジー・ヤン・ボー / 巫思远(シンガポール)|ジェームス・ブルックス(イギリス)|杉本達應(日本)|ニコラ・モリソン(イギリス)|ヒロコ ナカジマ(香港)|ピーター・ヨウ(アメリカ)|フア・クアン・チェン・サイ / 陈赛华灌(シンガポール)|マーティン・トーマス(イギリス)|松延総司(日本)|三上清仁(日本)|ルーパート・ロイデル(イギリス)|Lens(日本)|山田亮太(日本)

共催:公益財団法人みやうち芸術文化振興財団
助成:NATIONAL ARTS COUNCIL SINGAPORE
協力:Edouard Malingue Gallery、小山登美夫ギャラリー、HAGIWARA PROJECTS

企画発案/ディレクター:稲川豊|企画協力:兼本ひとみ(STUDIO NIJI)
デザイン・ディレクション:STUDIO NIJI
FUSS カウントダウン:杉本達應&稲川豊
メディア・パートナー:Glass Magazine