テック・ジン『カラフルなJavaScriptであそぼう』をつくりました

2023年5月、流浪の編集部「すぎもと組」は、4冊目のテック・ジンとなる『カラフルなJavaScriptであそぼう : p5.js / Konva.js / NestJSのノウハウブック』をつくりました。

著者たちの意見で電子版のみの発行になりました。B5判・162ページでなかなかのボリュームなので、紙の本を出すと高くなりそうですが、技術書典オンラインの最低価格の500円で提供しています。
https://colorfuljs.zine.sugimototatsuo.com/

カラフルなJavaScriptであそぼう | すぎもと組 流浪のテック・ジン発行所「すぎもと組」の最新刊! colorfuljs.zine.sugimototatsuo.com

技術書典オンラインマーケットで頒布しています。

カラフルなJavaScriptであそぼう p5.js/Konva.js/NestJSのノウハウブック:すぎもと組 『カラフルなJavaScriptであそぼう p5.js / Konva.js / NestJSのノウハウブック』 【電子 techbookfest.org

「まえがき」より

『カラフルなJavaScriptであそぼう』をお求めいただき、ありがとうございます。本書は、さすらいのテック・ジン醸造所「すぎもと組」が発行するテック・ジンの4冊目になります。

本書の成り立ちは、これまで発表してきたテック・ジンこれまで発表したテック・ジンは、『ばぶでもわかるおぶざばぶる』、『超ビジュアル訳 ニーチェの詩』、『データビジュアリスト宣言』です。とはちょっと違います。これまではすべて、すぎもと組の主宰者が、本文の一部を書いたり組版したりと内容に深くコミットしていました。本書は、ネットワークデザインスタジオ(ネットワークデザインスタジオは、東京都立大学大学院システムデザイン研究科インダストリアルアート学域の研究室のひとつです。)の大学院生3名が主体的に制作したものです。3人それぞれの関心分野で書きながら、1冊のジンとしての統一感は出してほしいだけリクエストし、完成するのを見守りました。

メンバーが決めた共通テーマはJavaScriptで、いろいろなライブラリを紹介しています。JavaScriptによるビジュアル表現やアプリ開発に興味を持っている方におすすめします。中身をすこしのぞいてみましょう。PART 1はp5.js。クリエイティブコーディングで盛り上がっているライブラリですね。PART 2はKonva.js。Canvasで2Dお絵書きなどができるライブラリです。PART 3はNestJS。Node.jsのサーバーサイドフレームワークです。だんだんレベルが上がっていく構成になっているようですね。メンバーそれぞれの関心の方向性や性格が反映された内容になっているとおもいます。

はじめて執筆に挑戦したものなので、読みにくかったり、工夫の余地がのこっているとおもいますが、ご容赦ください。

それでは、どうぞお楽しみください。

目次

  1. PART 1 p5.jsでジェネラティブアート表現を高めるコツ
    • CHAPTER 1 はじめに
    • CHAPTER 2 p5.jsとジェネラティブアート
    • CHAPTER 3 アート表現を高める3つのコツ
    • CHAPTER 4 実践:コツが活用された実例
    • CHAPTER 5 おわりに
  2. PART 2 Konva.jsを使った写真デコサイトのつくり方
    • CHAPTER 1 はじめに
    • CHAPTER 2 Konva.jsとは
    • CHAPTER 3 Konva.jsを使ってみよう
    • CHAPTER 4 簡易写真デコレーションサイトを作ってみよう
    • CHAPTER 5 おわりに
  3. PART 3 お手軽にアプリ開発ができるNestJSの始め方
    • CHAPTER 1 はじめに
    • CHAPTER 2 NestJSとは
    • CHAPTER 3 環境構築
    • CHAPTER 4 CRUD作成
    • CHAPTER 5 おわりに

著者によるレポート記事

3人の著者それぞれが、テック・ジン制作を振りかえった記事を公開しています。

はじめてのZineでクリエイティブコーティングのコード解説に挑戦 – ネットワークデザインスタジオのブログ 目次 目次 はじめに 担当したZineの内容について 表紙のデザイン さいごに はじめに こんにちは。アンです。最近研究室 blog.lab.sugimototatsuo.com

はじめてのZine作成 Konva.jsについて書いてみた – ネットワークデザインスタジオのブログ 目次 目次 はじめに なぜKonva.jsをハンズオン形式で紹介することにしたのか Zine執筆を振り返って おわりに は blog.lab.sugimototatsuo.com

はじめてのZine作成 NestJSでバックエンド開発に挑戦 – ネットワークデザインスタジオのブログ 目次 目次 はじめに NestJSを選んだ理由 取り組んでみて分かったこと 情報量はまだ多くない これからはRuby on blog.lab.sugimototatsuo.com

すぎもと組の既刊

すぎもと組の既刊もひきつづき頒布中です。こちらもどうぞよろしくお願いいたします。

すぎもと組 | 技術書典 杉本達應が主宰する奇妙なテック・ジンを発行するサークルです techbookfest.org

『Code as Creative Medium』日本語版が出ました

2022年1月25日、『Code as Creative Medium』の日本語版がビー・エヌ・エヌから発売されました。アートやデザインの分野でのプログラミング教育をテーマに、カリキュラムや教育方法を構築する参考となるための学習課題や教育者へのインタビューなどから構成されています。多くの学習課題や作品例を見ることができ、教育者の貴重な体験談を読むことができます。プログラミングの「教育」にフォーカスし、技法書ではないのでプログラミング言語のコードは登場しません。

http://www.bnn.co.jp/books/11411/

杉本は原書インタビューに寄稿し、共同翻訳者としてもこの本に関わりました。

日本語版発売を記念して、杉本の視点から本書を紹介します。

インタビューから刊行まで

原著者のテガ・ブレインさんとのZoomインタビューに協力したのは、2020年4月中旬のことでした。接続先のニューヨークはパンデミックの真っ最中。日本も緊急事態宣言のなか、新年度の授業をオンラインで行うための準備に追われている頃でした。すでに原書の制作は進んでいたようですが、今おなじ本をつくれば、コロナ禍への対応やリモート授業についての話題が入ったでしょう。

その翌年の2021年2月には原書が刊行され、さらに1年後の2022年1月に日本語版が刊行されました。かなり早く邦訳が出たのではないかとおもいます。

翻訳

ほかの翻訳者は、米田研一さんと澤村正樹さんです。米田さんは、クリエイティブコーダーです。澤村さんとは、『Generative Design』の日本語版でもご一緒しました。杉本は、第3章インタビューの翻訳を担当したため、自分のぎこちない英語を、さらにぎこちない日本語へと翻訳するという奇妙な経験をすることになりました。第1部、第2部の学習課題やエクササイズには、膨大な参照資料があるため、翻訳にあたった米田さんと澤村さんのお二人はたいへんな労力を注がれたこととおもいます。

原著者のゴラン・レヴィンさんとテガ・ブレインさんとは、データのやりとりで連絡をとりあうことがあり、親切に対応していただきました。感謝します。

日本語版オリジナルコンテンツ

ビー・エヌ・エヌ編集者の村田純一さんは、制作を進行しながら、日本語版のオリジナルコンテンツをあっという間につくりあげました。日本でこの分野の教育にあたられている方々です。五十嵐悠紀、鹿野護、久保田晃弘、小林茂、城一裕、高尾俊介、田所淳、玉城絵美、橋田朋子、古堅真彦、米田研一、脇田玲。

教育者たちの言葉

本書でもっとも印象に残るのは、第3部インタビューの教育者たちの言葉です。所属している組織によって状況は違いますが、みな口を同じくして学生たちの恐怖心を取り除くことの大切さを語っています。また教師が抱える不安も吐露されています。「教室運営のテクニック」のセクションには、彼らがあみだした授業を円滑に進めるための工夫がたくさん紹介されています。わたしも自分の授業でいくつか取り入れています。オンラインコースでもいろんなことが学べる現在、教育者にはたんなる知識伝達者以上の役割が求められているでしょう。

学生は、どんな宿題よりも、あなたの優しさをずっと覚えているでしょう。
──ホリー・オードウェイ

学習課題の起源

本書には「学習課題の起源」というセクションがあり、ぜひ注目してほしいです。英語圏に偏ってはいますが、アート・デザイン系のプログラミング教育の系譜がたどられています。どちらかと言えば標準化に向かう理工系のカリキュラムとは異なり、アート・デザイン系の課題には、前の世代の教育者からの影響が見られたり、創作者としての発想をベースにしていたりと、やや属人的な性質がありバリエーションも豊かです。

このセクションでは、そうした学習課題やシラバスが消え去っていることについて問題提起しています。課題がもとになって素敵な作品ができることはよくあります。偉大な作品は美術館などでアーカイブされます。しかし一方で、それを生み出した教育内容や課題は残っておらず、残そうとする努力も払われていません。インターネット上のコンテンツも、年月がたてばたやすく失われてしまいます。たった数十年前のことすらたどれないのは、この分野にとっては大きな損失です。本書は紙に定着された一つの記録として貴重ですが、これ以外の記録がなかったことになってはいけません。わたしたち教育者ひとりひとりが活動内容を保存しておく必要があることを教えられました。

英語版との違い

めずらしい横長の判型は、日本語版でも踏襲されています(普通の本よりもコストがかかるそうです)。なお原書のレイアウトは、スクリプトで生成されていて、MarkDownで書かれた原稿から印刷用のデータを生成しています。

ただ日本語版のカバーは、英語版とちょっと違います。原書をお持ちのかたは、ぜひ見比べてみてください。カバーのイメージは、アルゼンチン出身のアーティストManolo Gamboa Naonの作品です。表紙は英語版と同じように見えますが、微妙に違うバージョンが使われています。裏表紙には、英語版とは異なる作品が使われています。今後、別の言語版が登場したら、同じように少しずつ表紙が変わっていくかもしれません。

関連リンク

Processing開発者のケイシー・リースによる序文が公開されています。

https://note.com/bnn_mag/n/n9d5ab560ee1a

本書のサポートサイトには、本文中に登場するすべてのURLリンクが掲載されています。これを見るだけでも膨大な資料にあたっていることがわかります。整理し公開していただいた村田さんの心意気に感激です。

http://www.bnn.co.jp/specially/cacm-jp/

エクササイズの作例が掲載されているGitHubリポジトリです。

https://github.com/CodeAsCreativeMedium/exercises

書誌情報

ゴラン・レヴィン、テガ・ブレイン著、澤村正樹・杉本達應・米田研一訳,2022『Code as Creative Medium[コード・アズ・クリエイティブ・メディウム]―創造的なプログラミング教育のための実践ガイドブック』ビー・エヌ・エヌ.
編集:村田純一/デザイン:白川桃子

Amazonページ

BNN直販ページ

https://bnn.thebase.in/items/57240186

Kirk, Andy,黒川利明訳,2021,『データビジュアライゼーション ―データ駆動型デザインガイド―』朝倉書店.

版元の朝倉書店からご恵投いただきました。

『データビジュアライゼーション』は、Andy KirkのData Visualization第2版の邦訳です。本書は、特定のツールに依存せず、データ可視化における技術やプロセスに重点を置いています。約270ページ、フルカラーです。
https://www.asakura.co.jp/books/isbn/978-4-254-10293-2/

Andy Kirkはイギリスのデータ可視化の実務家でトレーナーです。彼のサイトは、データ可視化プロジェクトの好事例を定期的に紹介していて参考になります。
https://www.visualisingdata.com/

以前、彼のブログ投稿を翻訳して紹介したことがあります。

2016年前半のビジュアライゼーション10選
https://lab.sugimototatsuo.com/2016/08/10-significant-visualisation-developments-january-june-2016/

本書の特徴を3つとりあげます。

ひとつ目は、多くのチャートを分類したカタログ(第6章)があることです。棒グラフから方眼地図まで49種のチャートを5つのカテゴリで紹介しています。あらゆるチャートを網羅しているわけではありませんが、これを眺めるだけでいろんなアイディアが浮かんできます。

チャートの分類(杉本作成)

ふたつ目は、データ可視化プロジェクトにおける要綱作成、データ処理、編集的思考をまとめていることです(第2部)。この内容は、とくにメディアとしてデータ可視化を公開する方にとって力強い指針となりそうです。

みっつ目は、ページのところどころに、数多くの実務家や研究者の言葉が掲載されているところです。短いテキストなので警句集のように読むこともできるでしょう。人名で検索すると、さらに背景情報を得られます。ひとつだけ紹介しましょう。

「すべてに理由がなければならない」。
グラフィックデザイナーとして私が学んだ原則はデータ可視化にも当てはまります。
本質的に、すべてが合理的に説明され、なぜデザイン/ビジュアライゼーションでそうなっているのか、そうなっていないのかを示すロジックがなければなりません。

Stefanie Posavec

【目次】
日本語版によせて
はじめに
謝辞
著者紹介

第I部 基礎
1章 データ可視化の定義
データ可視化とは何か/相違と特徴/まとめ
2章 可視化デザインプロセス
デザインプロセス/デザイン原則/まとめ

第II部 背後の思考
3章 要綱を作成する
プロジェクトの文脈を定義する/プロジェクトのビジョンを確立する/まとめ
4章 データの処理
データ取得/データ検査/データ変換/データ探索/まとめ
5章 編集的思考の確立
編集的思考とは何か/編集的思考の影響/まとめ

第III部 デザインソリューションの開発
6章 データ表現
ビジュアル・エンコーディングとチャート/影響要因と考慮点/まとめ
7章 インタラクティブ機能
インタラクティブな諸機能/影響要因と考慮点/まとめ
8章 注釈
注釈機能/影響要因と考慮点/まとめ
9章 色
色モデルの概要/色のフィーチャー/影響要因と考慮点/まとめ
10章 構成
構成のフィーチャー/影響要因と考慮点/まとめ

エピローグ
参考文献
訳者あとがき
索引

Kirk, Andy,黒川利明訳,2021,『データビジュアライゼーション ―データ駆動型デザインガイド―』朝倉書店.[ISBN: 9784254102932] https://amzn.to/3eZTaaX

『Code as Creative Medium』にインタビュー掲載

このたびご縁がありまして、書籍『Code as Creative Medium』にインタビューが掲載されました。

本書は、コンピュテーショナル・アート・デザインの「教育」に焦点を当てた本です。(1)研究課題、(2)演習問題、(3)インタビューの3部で構成されています。多彩な作品事例の写真が掲載されていて、眺めて楽しめるだけでなく、この領域で教えている人にとっては膨大なリソースの宝庫になっています。

クリエイティブ・コーディングについて特定の技術や技法を扱う書籍は多数出版されています。しかし教育方法に絞った本は初めてではないでしょうか。こうしたコンセプトの本が登場したのは、世界中のアート・デザイン教育の現場で、コンピュテーショナルな演習やカリキュラムが一般化したことを反映しているのでしょう。多くのノウハウを共有することで、この分野の指導者を応援してくれます。本書の著者2人とコントリビューター16人は、著名なアーティストばかり。Golan Levin, Tega Brain, Taeyoon Choi, Zachary Lieberman, Lauren Lee McCarthy, Alison Parrish, Casey Reas, Daniel Shiffman, Jer Thorpなど……。そのなかにわたしも入っているのは単純に驚きですが、とてもうれしいです。

インタビューの部では、下記のトピックについて多くの人が回答しています。それぞれの回答を見るだけで相当勉強になりそうです。

– アーティストやデザイナーにプログラミングを教えること
– 双峰分布クラス(経験者と初心者が混合しているクラス)
– 視点の促し
– 初日
– お気に入りの課題
– うまくいかなかったとき
– 心に残った反応
– 新人教師へのアドバイス

書誌情報
Golan Levin and Tega Brain, 2021, Code as Creative Medium: A Handbook for Computational Art and Design, MIT Press.
https://mitpress.mit.edu/books/code-creative-medium

『超ビジュアル訳 ニーチェの言葉』をつくりました

このたび、すぎもと組では2冊目の技術同人誌『超ビジュアル訳 ニーチェの言葉:p5.jsでうたう「深夜の鐘の歌」』をつくりました。

特設ウェブサイトはこちら。

https://visualized-nietzsche.tumblr.com/

技術書典9で頒布します。

https://techbookfest.org/product/5727504515989504

この本の特徴

ずばり!
・ニーズのない本です(明日の仕事に役立ちません)
・右綴じ・縦書きの本です
・ニーチェの入門になる本です
・p5.jsをすこし学べる本です
・紙で読んでいただきたい本です(電子版はおまけです)
……ようはヘンな本です。

「超ビジュアル訳」って何?

超ビジュアル訳とは、テキストをビジュアルに翻訳すること。本書では、ニーチェの詩の一行一行を解釈し、想像したイメージをつくりあげました。どのイメージも文字を構成したタイポグラフィ作品です。

今回も編者のわたしの呼びかけに応じた学生といっしょに作りました。表紙、本文のイメージ、テキストは、ほとんど学生が制作しました。わたしはブックデザインに力をいれました。

目次

まえがき

第一部 作品篇
  深夜の鐘の歌
  ひとつ!
  ふたつ!
  みっつ!
  よっつ!
  いつつ!
  むっつ!
  ななつ!
  やっつ!
  ここのつ!
  とお!
  じゅういち!
  じゅうに!

第二部 解説篇
  深夜の鐘の歌
  「深夜の鐘の歌」解説

第三部 技法篇
  p5.jsとは
  作品概要とコード解説

あとがき

Zarathustra’s Rundgesang
ニーチェ略歴
ブックガイド
編著者かく語りき

技術書典すごい!

さて、前回の技術書典8は急遽オンライン開催になりましたが、今回ははじめからオンラインイベントとして開催されます。
イベント運営の目玉として、作り手にも読み手にもやさしい変更がたくさんありました。出展料が無料、販売手数料ほとんどの場合無料、紙の本の送料も無料。前回、主催者にはおおきな損失があったはずなのに、こんなすぐに新機軸が発表されるなんてびっくりです。これでイベントが成り立つのか心配ですが、きっと大丈夫なのでしょう。ありがたくこの場を使わせていただきます。

既刊もどうぞ

すぎもと組の既刊『ばぶでもわかるおぶざばぶる D3.jsとObservableではじめるデータビジュアライゼーション超入門』もひきつづき頒布します。こちらもどうぞよろしくお願いします。特設ウェブサイトはこちら。

https://observable-babies.tumblr.com/

技術書典9のページはこちら。

https://techbookfest.org/product/5174238650564608

技術書典9のp5.js本

技術書典9にでているp5.js関連本は、レオナさんの2冊が注目です!

できるだけ毎日続けるためのデイリーコーディング戦略 [第2版]
https://techbookfest.org/product/6000948635762688

2時間でクリエイティブコーダーになる本 p5.jsではじめるアートプログラミング
https://techbookfest.org/product/5666883730669568

ぜひお求めください!

ニーチェ本は、あまり世の中に似たものがないヘンな本です。読んでくれる人がどれほどいらっしゃるか想像がつきません。興味をもたれた方はぜひお求めください。印刷費をたっぷりかけて紙の本をしっかり作りました。でも赤字覚悟でお安くしています。
お読みになった方から感想をいただけることをたのしみにしています。

技術同人誌『ばぶでもわかるおぶざばぶる』をつくりました

このたび、すぎもと組は技術同人誌『ばぶでもわかるおぶざばぶる』をつくりました。すぎもと組とは、わたしが授業連絡などでつかっているSlackのワークスペース名です。決してあやしい団体ではありません。

すぎもと組編,2020,『ばぶでもわかるおぶざばぶる : D3.jsとObservableではじめるデータビジュアライゼーション』すぎもと組.

技術書典応援祭(オンライン開催、2020年3月日−4月5日)

つくった経緯

この同人誌は、「技術書典8」にはじめて出展する予定でした。新型コロナウイルス感染症のため開催中止となり、代わりに開催されている技術書典応援祭に出展しています。

技術書典は、来場者1万人規模の大きな技術同人誌の即売会イベントです。2018年秋、わたしは出張の合間に技術書典5に参加者として訪れました。開場前からの長蛇の列に、身動きがとれないほどの会場内の混雑ぶりに驚きながら、こんな場に参加するなら、出展者として参加したほうが楽しいだろう。そう思いましたが、地方在住者(当時は佐賀在住)としては、東京でしか開催されない技術書典への出展は現実的ではありませんでした。もちろん地方から参加しているサークルも多数あるとはおもいますが。

それから1年──。2019年の秋、わたしは東京に引っ越していました(!)。メールマガジンで技術書典8サークル参加申込みの締切が迫っていることを知り、出展することを思いついたのです。締切前日(2019年11月30日)に、いっしょに同人誌作ってみないかとデータ可視化の演習授業の受講生に呼びかけました。すると数人の学生が手をあげたので、翌日ぎりぎりに申し込みました。12月15日、当選発表があり、参加費を支払って制作をはじめました。

2月中旬にできあがったので、制作期間は約3か月です。ただし実質はもっと短い短期集中で作りました。学生は第2章の作例を担当し、わたしは前半の第1章を担当しました。第2章の内容や、タイトル、カバーデザイン、イラストなどは、どれも学生の発案です。

目次

はじめに
第I部 入門編
第1章 D3.js をはじめよう
 1.1 D3.jsとは
 1.2 はじめてのD3
 1.3 D3 vs.jQuery vs. JavaScript
第2章 Observable 入門
 2.1 Observableとは
 2.2 ノートブックの編集
第3章 Observable の JavaScript
第4章 ノートブック・ギャラリー
第II部 実践編
第5章 シンプルな表
 5.1 ここで作れる表
 5.2 2次元配列の場合
 5.3 オブジェクトの配列の場合
第6章 ロリポップチャート
 6.1 ここで作れるグラフ
 6.2 データの準備
 6.3 チャートの作成
第7章 折れ線グラフ
 7.1 ここで作れるグラフ
 7.2 データの準備
 7.3 チャートの作成準備
 7.4 チャートの作成
第8章 ドーナツチャート
 8.1 ここで作れるグラフ
 8.2 データの準備
 8.3 チャートの作成
第9章 箱ひげ図
 9.1 ここで作れるグラフ
 9.2 データの準備
 9.3 チャートの作成
第10章 ヒートマップ
 10.1 ここで作れるグラフ
 10.2 データの準備
 10.3 チャートの作成
第11章 地図
 11.1 ここで作れる地図
 11.2 データの準備
 11.3 地図の作成
著者紹介
おわりに

誰のための本か

この本で紹介しているのは、JavaScriptのライブラリD3.jsと、JavaScriptの共有ノートブックWebサービスのObservableです。データビジュアライゼーション超入門と謳ったとおり、はじめてデータからビジュアルをつくってみたい初学者のためのガイドブックです。そのため本書で取り扱っているのは、棒グラフなどの基本的なチャートです。複雑なデータビジュアライゼーションではありませんが、データセット(CSVやJSONなど)があれば、ちょっとしたスケッチを描くように可視化できるので、ぜひ体験していただきたいです。

Image from Gyazo
わたしのObservableノートブックは200個を超えています。

デザイナーの方でも、エンジニアの方でも、データの可視化にすこしでも興味のある方は、ぜひ読んでいただきたいです。また、学生やお子さんも、プログラミングの入門として気軽に読んでいただけます。

感想は、ハッシュタグ #ばぶでもわかるおぶざばぶる #ばぶ本 でお待ちしています。続編の希望があれば、動的なデータの取り扱いや、ボタンなどをつかったインタラクションなどについても書いてみたいです。

同人誌づくりは楽しい!

はじめて技術同人誌をつくってみて、よかったと思ったことがいくつかありました。

第一に、誰かといっしょにつくる楽しさがあります。今回は、学生といっしょに作ったことでなんとかできあがりました。ひとりでつくっていたらモチベーションを維持できず、途中で頓挫したかもしれません。

第二に、テーマとなる技術の勉強になります。執筆した学生は、「文章で伝えるって難しいですね」とつぶやいていました。何となく理解しているつもりのことでも、伝えるために文章に起こすと、意外と分かっていなかったりします。だれかに教えるためには、まず書き手が学ぶ必要があるんですね。わたしも内容に間違いがないように、D3.jsのソースコードを確認することがあり、大いに勉強になりました。

第三に、出版物の理解が深まります。同人誌でも商業書籍でも、1冊の本が生まれるまでには、企画、執筆、編集、デザイン、組版、印刷、製本、営業(宣伝)、流通、販売など、数多くのプロセスがあります。同人誌を作ることは、そのプロセス全部に関われます。世の中に流通している本にも、ひとつひとつ制作のストーリーがあることに思いをはせると、本が生まれることへの感謝の気持ちが生まれました。

今回、同人誌最大の醍醐味である対面販売の機会がなくなったのは残念ですが、同人誌づくりは楽しかったです。技術書典に関心のある人は、ぜひ何か作ってみてはいかがでしょうか。複数人で書くのが気楽でよいとおもいます。丸ごと1冊書ける人でも、デザインや校正など他者の協力をもらいながら作ることを強くおすすめします。その方が完成度も上がりますし、なによりつくる過程を楽しめますから。

制作プロセスについては、別途エントリーをあげる予定です。

『Dear Data』日常生活のデータが綴られたビジュアルな文通

2016年の書きかけの書評。ブログにアップしていたとおもっていたけど、アップしていなかったようなので、ここにあげておく。


Lupi, Giorgia, and Stefanie Posavec. Dear data

Dear Data
Dear Data

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Giorgia Lupi Stefanie Posavec
Princeton Architectural Press
売り上げランキング: 30,680

↑米国版

Dear Data
Dear Data

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売り上げランキング: 1,992,209

↑英国版

本書は、ニューヨークとロンドンに住む同い年の女性デザイナー、ジョージア・ルピとステファニー・ポザベックのふたりが1年間文通した記録だ。葉書の内容は、文字で書かれたメッセージではなくデータをあらわすグラフィック。52週にわたって綴られた量に圧倒されるだけでなく、毎週あらたな表現にチャレンジしていることに驚かされる。本書のさいごに「そんなに難しくないよ」と、つくる手順が紹介されているが、しっかり取り組むとこれだけで1週間が終わってしまいそうだ。

  1. データ収集家として世界を見よう
  2. 問いからはじめよう
  3. データを集めよう
  4. データをじっくり見よう
  5. まとめて分類分けしよう
  6. メイン・ストーリーを見つけよう
  7. ビジュアルをひらめいて、自分らしいボキャブラリーをつくろう
  8. 最初のアイディアでスケッチして実験しよう
  9. 最終版のスケッチを描こう
  10. 凡例を描こう
  11. 最後に投函しよう

交わされた葉書はすべてWebサイトで見ることができるが、細部までじっくり眺めることができる本をおすすめする。

本書は、ジョージアとステファニーが、日常生活の細かなことを相手に見せながら仲良くなった物語です。といってもカフェやバー、ソーシャルメディアでおしゃべりしたのではありません。その代わり、時代遅れの通信に変わった工夫をほどこしました。1年のあいだ毎週ポストカードを送りあい、その週の出来事を相手に説明するのです。出来事を「書く」のではなく「描く」ことにしました。すべての出来事は描かずに毎週テーマを決めました。

毎週月曜日、その週の自分に関するデータを集めるテーマを決めます。文句を言う頻度、嫉妬にかられる回数、いつだれの身体と接触するか、聴こえてくる音。葉書サイズの紙に、こうしたデータをあらわすスケッチを描き、ステファニーは「ポストボックス」(英国)に、ジョージアは「メールボックス」(米国)に投函しました。

[……]私たちは「ビッグデータ」の時代に生きていると言われています。そこではアルゴリズムと計算が普遍的な問いへの新たな鍵であり、無数のアプリケーションが私たちのデータを発見し、収集し、ビジュアライズすることで、人間を超人にしようとしてくれます。私たちは、もっとゆっくり、よりアナログな方法でデータに近づくことにしました。「Dear Data」は、自分を定量化するプロジェクトではなく、「パーソナル・ドキュメンタリー」だと考えています。これは微妙だけれど決定的な違いです。ただ効率化するためにデータを使うのではなく、より人間的になり、他者と深いレベルでつながるために、データを使うことができると思うのです。

(はじめに)

二人はビッグデータ時代の功利的なデータ活用が盛んに広まっている潮流に抗い、あえてデータをテーマにしたパーソナルなドキュメンタリーに取り組んでいることがわかる。もっとも彼女たち自身はデザイナーとして、ふだん商業的なプロジェクトに携わっているはずだ。そうした合間に、みずからの好奇心とスキルをいかしながら個人的な表現活動を続けている。そのことに表現者としての矜持を感じた。

書誌情報

Lupi, Giorgia, and Stefanie Posavec. 2016. Dear data. New York : Princeton Architectural Press.
Lupi, Giorgia, and Stefanie Posavec. 2016. Dear data. London: Particular Books.

目次

  • 序文 Maria Popova(米国版のみ)
  • はじめに
  • 本文

リンク

ビデオ

Eyeo 2015 – Giorgia Lupi and Stefanie Posavec from Eyeo Festival // INSTINT on Vimeo.

『メディア技術史―デジタル社会の系譜と行方』

2013年10月、飯田豊(編著)『メディア技術史―デジタル社会の系譜と行方』(北樹出版、2013年)が発行されました。

メディア技術史―デジタル社会の系譜と行方
飯田 豊 大久保 遼 木暮 祐一 柴野 京子 杉本 達應 谷口 文和 溝尻 真也 和田 敬
北樹出版
売り上げランキング: 16,931

本書は、書物や写真、映画などさまざまなメディア技術の成り立ちを学ぶためのテキストです。
杉本は、第8章(コンピュータ)、第9章(インターネット)、カバーデザインを担当しました。
目次の下に、立ち読み風連続ツイートを掲載しています。

『メディア技術史―デジタル社会の系譜と行方』
目次

第1章 技術としての書物―紙の本vs電子本への古くて新しい回答(柴野京子)
1.デジタルとアナログのかなしい対立
2.書物の技術を考える
3.活版印刷の発明と革命
4.グーテンベルクの銀河系—活字人間とデジタル人間のあいだで

第2章  写真はどこにあるのか―イメージを複製するテクノロジー(大久保遼)
1.カメラ・オブスキュラと〈写真〉の夢
2.ダゲレオタイプと鏡としての写真
3.カロタイプと複製技術としての写真
4.マジック・ランタンと語りのなかの写真
5.写真製版とマスメディアとしての写真
6.写真の現在へ—デジタル化と写真コミュニケーション

第3章  映画の歴史を巻き戻す―現代のスクリーンから映画の幼年時代へ(大久保遼)
1.遍在するスクリーン
2.マジック・ランタンとスクリーン・プラクティス
3.映像が動き始める
4.パフォーマンスのなかのシネマトグラフ
5.初期映画から現代のスクリーンへ

第4章  音楽にとっての音響技術―歌声の主はどこにいるのか(谷口文和)
1.ボーカロイドから考える音の技術とメディア
2.録音技術から録音メディアへ
3.レコード音楽のリアリティ
4.ボーカロイドの居場所

第5章  声を伝える/技術を楽しむ―電話・ラジオのメディア史(溝尻真也)
1.メディア技術の楽しみ方をめぐる歴史
2.メディアとしての電話の生成と変容
3.ラジオアマチュアたちの戦前/戦後史
4.新しいメディアの楽しみ方に向けて

第6章 テレビジョンの初期衝動 ―「遠く(tele)を視ること(vision)」の技術史(飯田豊)
1.「テレビジョン」の源流を訪ねて
2.二つの技術方式
3.「テレビジョン」の未来像
4.「テレビジョン」から「テレビ」へ
5.テレビの21世紀

第7章  ローカルメディアの技術変容―ミニFMという実践を補助線に(和田敬)
1.ローカルメディアとは何か
2.マスメディア型のローカルメディア
3.パーソナルネットワーキング型のローカルメディア
4.ハイブリッド型の「ミニFM」—関西のネットワークを事例に
5.他者関係を組み替えてゆくローカルメディアの可能性

第8章  文化としてのコンピュータ―その「柔軟性」はどこからきたのか(杉本達應)
1.コンピュータの多様な用途
2.コンピュータの歴史をとらえる支店
3.「超人」マシンの夢から、パーソナルコンピュータへ
4.コンピュータユーザの身体性—インタフェースの変遷
5.コンピュータの「柔軟性」はどうなるのか

第9章  開かれたネットワーク―インターネットをつくったのは誰か(杉本達應)
1.コンピュータネットワークの変遷
2.インターネットの自由な文化〈フリーカルチャー〉
3.ユーザとインターネットの関係を再考する
4.インターネットの豊かさの行方

第10章  手のひらの情報革命―携帯からケータイへ(木暮祐一、飯田豊)
1.場所を問わず、より多くの通信をさばけるように
2.携帯電話からケータイへ—端末のマルチメディア化
3.ケータイを学ぶ/ケータイから学ぶ

第11章  誰のための技術史?―アマチュアリズムの行方(飯田豊)
1.メディアの黎明期=「アマチュア」の時代
2.「アマチュア」の困難—専門家と非専門家の「乖離」
3.技術思想としての「アマチュアリズム」
4.再び「アマチュア」の時代?—インターネット上の創作活動をめぐって