2017年7月から8月にかけて福岡アジア美術館で開催された企画展「おいでよ!絵本ミュージアム2017」で、参加型デジタルコンテンツ「みんなでつくろう天の川」を展示しました。絵本ミュージアムは、福岡の夏休みの恒例行事としてすっかり定着しています。開催10周年を記念した今年のテーマは、「いっしょに」。絵本や展覧会も多くの人びとがかかわって完成しています。仲間と一緒につくりあげる楽しさを伝えたいという気持ちがこめられています。
#絵本ミュージアム10周年 を記念した特集記事が西日本新聞でスタートしましたʕ•ᴥ•ʔ 背景を知っていただくと、より絵本ミュージアムを楽しめるはず!ぜひお読みください!#福岡アジア美術館 #夏休み pic.twitter.com/nQVsKv2hY9
— おいでよ!絵本ミュージアム (@ehonmuseum) August 2, 2017
会場では、絵本の世界が実物大で再現されて展示されています。アーティスト・角孝政さんによる立体造形や、効果的な照明がすばらしかったです。「○△□の森」という幾何学図形をつかった絵本や、真っ暗な部屋の点字絵本コーナーも楽しかったです。「みんなでつくろう天の川」は、展示スペース後半の天吊スクリーンに映し出されています。絵本の世界感を再現した展示ほどの存在感はありませんが、多くの子どもたちが楽しんでくれました。
「みんなでつくろう天の川」のなりたち
「みんなでつくろう天の川」は、絵本ミュージアム・プロデューサーの高宮由美子さんと「絵本ミュージアム」ならではのデジタルコンテンツについて数ヶ月にわたって相談しながら新たに制作したものです。
絵本は、物質としては絵や物語がおさめられた紙の本です。美術品のような美しさがある一方で、大量生産された商品という側面ももちあわせています。とはいえ、この絵本のことを思い出すときには、本という物質の質感だけではなく、ページのデザイン、文字のならび、それを読んだ時代や場所や朗読する声、ページをめくる感覚、思い浮かべる情景などが浮かび上がってきます。つまり絵本は、たくさん流通している複製物でありながらも、きわめて個人的で身体に刻まれた記憶がからみあっている、複合的な媒体だといえるのです。このような絵本をあつかう「絵本ミュージアム」では、なによりも絵本をじっくり読んだり、イメージをふくらませたりすることを大切にしたいと考えました。つまり、絵本を読む落ち着いた空間をこわさないように、いかにもデジタルっぽいギラギラした質感を表に出さないようにする必要がありました。
結果として、まる・さんかく・しかくというシンプルな形状のスタンプとポストカード、リアルタイムに生成するアニメーションを投影するスクリーンで構成しました。参加者は、好きなパターンをスタンプで描き、名前を書いたカードをスキャンします。スキャンしたカードは、円弧状のスクリーンの夜空に浮かびあがり、スタンプの形状が夜空の星となって、天の川ができあがります。背景やときおり登場するキャラクターには、今回の絵本ミュージアムの特集作家である絵本作家たちもとみちこさんの絵をつかっています。
ちなみに、たちもとさんの貴重な原画データを見ることができ、たちもとさんなりの画風や、細やかな作り込みの工夫に大変感動しました。
「おいでよ!絵本ミュージアム2017」(福岡アジア美術館)がはじまりました。「みんなでつくろう天の川」7月20日は、みんなのカードを350枚以上よみとりました。 pic.twitter.com/x7GGfNEt6f
— SUGIMOTO Tatsuo/杉本達應 (@sugi2000) July 20, 2017
#みんなでつくろう天の川 では会場に来たみんなが押した○△◻︎のスタンプがお星さまになってスクリーンの夜空を彩ります(*´ω`*)https://t.co/xGK09zSdEN…#絵本ミュージアム #夏休み #福岡アジア美術館 pic.twitter.com/e2H6Tj6BpF
— おいでよ!絵本ミュージアム (@ehonmuseum) July 23, 2017
今日はあいにくのお天気のようです。お気をつけてお越し下さい。#絵本ミュージアム では、どんなお天気でも #みんなでつくろう天の川 が夜空を彩ります☆みんなが押したスタンプがその場でスキャンされ、夜空へ…https://t.co/PRsOd4EC3L#絵本 #福岡アジア美術館 pic.twitter.com/BteqvAzUMZ
— おいでよ!絵本ミュージアム (@ehonmuseum) August 8, 2017
「みんなでつくろう天の川」でたいせつにしたこと
「みんなでつくろう天の川」でたいせつにしたポイントは以下のとおりです。
- 手触り感とともにつくる
デジタルコンテンツといっても、手で触れるスタンプと紙を使いました。絵本は物語そのものだけでなく、本の表紙やページの手触りも感じます。そうした触感に訴える創作をはじめにやってもらいました。 - いっしょにつくる
展覧会のテーマ「いっしょに」に合わせ、たくさんの参加者が参加して、はじめて夜空に天の川ができるようなものに仕上げました。会場ではたくさんの子どもたちが自由に動いています。自由参加であっても結果的に協同創作に参加できるような工夫をほどこしました。 - 控えめな演出
この展示は、テクノロジーを見せることが目的ではありません。「絵本ミュージアム」の絵本を読むスペースに設置されることから、できるだけ来場者が絵本を読むことに集中できるように、視覚的な演出は最小限におさえました。星のうごきはゆっくりで、背景はさらにゆっくりうごいています。まるで流れ星のように、ときどきキャラクターがあらわれます。スクリーンをぼんやりずっと見ている人だけにおくるささやかなプレゼントです。 - 帰宅しても楽しめる
ポストカードは持ちかえることができます。またスキャンしたカードを特設Webサイトにアーカイブし、会場だけでなく帰宅後にスマホやPCからでも楽しめるようにしました。 - いつでも動作している
展覧会の会期は、32日間無休です。つねに展示がおこなわれていて、システムが落ちないように、使用する道具の耐久性やシステムの堅牢性を保つよう工夫しました。開発したシステムについては、別記事の技術メモに書きとめます。
#みんなでつくろう天の川 のスタンプは使い込まれ、年季が入っていました。絵本ミュージアム・プロデューサーの高宮由美子さんとも意気投合しましたが、お子さんだけでなくパパママにもぜひ参加してほしいとおもっています。夕方は比較的空いていますので、おとなだけでも遠慮せずあそんでください。 pic.twitter.com/fXFjmdan0q
— SUGIMOTO Tatsuo/杉本達應 (@sugi2000) August 8, 2017
謝辞
「みんなでつくろう天の川」をつくるさい、次の方がたにとくにお世話になりました。
企画、プロデュースでは、子ども文化コミュニティの高宮由美子さん、藤野惠介さん。西日本新聞社の笠井優さん。NTT西日本グループの上田智子さん、小原由輝子さん、NTTコミュニケーション科学基礎研究所のみなさん。
会場設計・施工などでは、環境デザイン機構の岡大輔さん、アラタデザイン一級建築士事務所の荒田寛さん、ステージクルー・ネットワークの糸山義則さん、ハダ工芸社のみなさん、デザイナーのマツダヒロチカさん。
スタンプ制作では、井川健先生と藤田加奈子さん(佐賀大学)、ワークショップ学生チームのみなさん(佐賀大学芸術地域デザイン学部)、FabLab Sagaの陣内和宏さん、ツキネコのみなさん。ポストカード印刷はプリントパックさん。
会場運営では、子ども文化コミュニティのみなさん、会場スタッフのみなさん。
多くのみなさんの協力で展示が成り立ちました。1回目の絵本ミュージアムでのムービーカード・ワークショップ以来、ふたたび絵本ミュージアムで、こどもたちといっしょに創作体験するることができることができ、とてもうれしくおもっています。このような機会をいただき感謝いたします。
みんなでつくろう天の川
企画・制作:高宮由美子、杉本達應
システム開発:杉本達應
イラストレーション:たちもとみちこ
開催概要
おいでよ!絵本ミュージアム2017
会期:2017年7月20日-8月20日
会場:福岡アジア美術館
主催:福岡アジア美術館、西日本新聞社、TNCテレビ西日本、NPO法人子ども文化コミュニティ
http://www.kodomo-abc.org/ehonmuseum2017/
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おもな展示絵本
文化出版局
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童心社
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ひさかたチャイルド
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