(報告者プロフィール) タグチヒトシ(演出家) 1973年横浜市出身、筑波大学芸術専門学群総合造形学科卒。演出・振付を駆使して生みだすのは「いま・ここ」の身体表現。2008年に株式会社イッカクを設立。現代という時代を創造し、表現と社会の新たなかかわりあいについて、その考察と実践を進めている。文化庁芸術家海外研修でニューヨークに滞在(2016年)。文化庁メディア芸術祭審査委員会推薦作品「HERO HEROINE」(2019年)。 『獅子と仁人』は、沖縄県宜野座の創作エイサーLUCKと、アートグループGRINDER-MAN、ビジュアルデザインスタジオWOWのコラボレーションによって、2020年11月に宜野座村文化センターがらまんホールからストリーミング配信にて発表。2020年12月には文化庁芸術文化収益強化事業に採択され、2021年2月に再収録。2021年4月から新版「The Ancient Lion and Modern Man」がVimeo On Demandにてオンデマンド配信中。 https://www.facebook.com/shishitohito/
クリエイティブ・コーディングについて特定の技術や技法を扱う書籍は多数出版されています。しかし教育方法に絞った本は初めてではないでしょうか。こうしたコンセプトの本が登場したのは、世界中のアート・デザイン教育の現場で、コンピュテーショナルな演習やカリキュラムが一般化したことを反映しているのでしょう。多くのノウハウを共有することで、この分野の指導者を応援してくれます。本書の著者2人とコントリビューター16人は、著名なアーティストばかり。Golan Levin, Tega Brain, Taeyoon Choi, Zachary Lieberman, Lauren Lee McCarthy, Alison Parrish, Casey Reas, Daniel Shiffman, Jer Thorpなど……。そのなかにわたしも入っているのは単純に驚きですが、とてもうれしいです。
このときのSFPCでは「Citizen Code of Conduct」が掲げられていた。「Code of Conduct」は日本ではよく「行動規範」と訳されている。イベント参加者の規範となる振る舞いを定め、差別やハラスメントを許容しないと謳う共同体のルールを示した文書だ。ただSFPCのそれは一風変わっている。タイトルには「Citizen」(市民)がついていて、さらに「Open [中略] Citizenship」という項目が立てられている。SFPC参加者有志がこの行動規範の日本語訳に取り組んだとき、Citizenshipの訳になやまされた。一般的に「市民権」や「公民権」と訳すようだが、しっくりこない。文脈からここでのシチズンシップとは、権利であるとともに「共同体の成員としての責任をもつ態度」をさしていると理解した。なぜこれほどまでにシチズンシップを重視しているのか。なぜなら、一人ひとりの態度や行動が集まることで、彼ら・彼女らが属する共同体や社会の姿がかたちづくられるからだ。SFPCの行動規範では、多様な人を受け入れること、フレンドリーに接すること、不平等を是正し権力の濫用を食い止めることなど、積極的な行動を促している。