技術同人誌『ばぶでもわかるおぶざばぶる』をつくりました

このたび、すぎもと組は技術同人誌『ばぶでもわかるおぶざばぶる』をつくりました。すぎもと組とは、わたしが授業連絡などでつかっているSlackのワークスペース名です。決してあやしい団体ではありません。

すぎもと組編,2020,『ばぶでもわかるおぶざばぶる : D3.jsとObservableではじめるデータビジュアライゼーション』すぎもと組.

技術書典応援祭(オンライン開催、2020年3月日−4月5日)

つくった経緯

この同人誌は、「技術書典8」にはじめて出展する予定でした。新型コロナウイルス感染症のため開催中止となり、代わりに開催されている技術書典応援祭に出展しています。

技術書典は、来場者1万人規模の大きな技術同人誌の即売会イベントです。2018年秋、わたしは出張の合間に技術書典5に参加者として訪れました。開場前からの長蛇の列に、身動きがとれないほどの会場内の混雑ぶりに驚きながら、こんな場に参加するなら、出展者として参加したほうが楽しいだろう。そう思いましたが、地方在住者(当時は佐賀在住)としては、東京でしか開催されない技術書典への出展は現実的ではありませんでした。もちろん地方から参加しているサークルも多数あるとはおもいますが。

それから1年──。2019年の秋、わたしは東京に引っ越していました(!)。メールマガジンで技術書典8サークル参加申込みの締切が迫っていることを知り、出展することを思いついたのです。締切前日(2019年11月30日)に、いっしょに同人誌作ってみないかとデータ可視化の演習授業の受講生に呼びかけました。すると数人の学生が手をあげたので、翌日ぎりぎりに申し込みました。12月15日、当選発表があり、参加費を支払って制作をはじめました。

2月中旬にできあがったので、制作期間は約3か月です。ただし実質はもっと短い短期集中で作りました。学生は第2章の作例を担当し、わたしは前半の第1章を担当しました。第2章の内容や、タイトル、カバーデザイン、イラストなどは、どれも学生の発案です。

目次

はじめに
第I部 入門編
第1章 D3.js をはじめよう
 1.1 D3.jsとは
 1.2 はじめてのD3
 1.3 D3 vs.jQuery vs. JavaScript
第2章 Observable 入門
 2.1 Observableとは
 2.2 ノートブックの編集
第3章 Observable の JavaScript
第4章 ノートブック・ギャラリー
第II部 実践編
第5章 シンプルな表
 5.1 ここで作れる表
 5.2 2次元配列の場合
 5.3 オブジェクトの配列の場合
第6章 ロリポップチャート
 6.1 ここで作れるグラフ
 6.2 データの準備
 6.3 チャートの作成
第7章 折れ線グラフ
 7.1 ここで作れるグラフ
 7.2 データの準備
 7.3 チャートの作成準備
 7.4 チャートの作成
第8章 ドーナツチャート
 8.1 ここで作れるグラフ
 8.2 データの準備
 8.3 チャートの作成
第9章 箱ひげ図
 9.1 ここで作れるグラフ
 9.2 データの準備
 9.3 チャートの作成
第10章 ヒートマップ
 10.1 ここで作れるグラフ
 10.2 データの準備
 10.3 チャートの作成
第11章 地図
 11.1 ここで作れる地図
 11.2 データの準備
 11.3 地図の作成
著者紹介
おわりに

誰のための本か

この本で紹介しているのは、JavaScriptのライブラリD3.jsと、JavaScriptの共有ノートブックWebサービスのObservableです。データビジュアライゼーション超入門と謳ったとおり、はじめてデータからビジュアルをつくってみたい初学者のためのガイドブックです。そのため本書で取り扱っているのは、棒グラフなどの基本的なチャートです。複雑なデータビジュアライゼーションではありませんが、データセット(CSVやJSONなど)があれば、ちょっとしたスケッチを描くように可視化できるので、ぜひ体験していただきたいです。

Image from Gyazo
わたしのObservableノートブックは200個を超えています。

デザイナーの方でも、エンジニアの方でも、データの可視化にすこしでも興味のある方は、ぜひ読んでいただきたいです。また、学生やお子さんも、プログラミングの入門として気軽に読んでいただけます。

感想は、ハッシュタグ #ばぶでもわかるおぶざばぶる #ばぶ本 でお待ちしています。続編の希望があれば、動的なデータの取り扱いや、ボタンなどをつかったインタラクションなどについても書いてみたいです。

同人誌づくりは楽しい!

はじめて技術同人誌をつくってみて、よかったと思ったことがいくつかありました。

第一に、誰かといっしょにつくる楽しさがあります。今回は、学生といっしょに作ったことでなんとかできあがりました。ひとりでつくっていたらモチベーションを維持できず、途中で頓挫したかもしれません。

第二に、テーマとなる技術の勉強になります。執筆した学生は、「文章で伝えるって難しいですね」とつぶやいていました。何となく理解しているつもりのことでも、伝えるために文章に起こすと、意外と分かっていなかったりします。だれかに教えるためには、まず書き手が学ぶ必要があるんですね。わたしも内容に間違いがないように、D3.jsのソースコードを確認することがあり、大いに勉強になりました。

第三に、出版物の理解が深まります。同人誌でも商業書籍でも、1冊の本が生まれるまでには、企画、執筆、編集、デザイン、組版、印刷、製本、営業(宣伝)、流通、販売など、数多くのプロセスがあります。同人誌を作ることは、そのプロセス全部に関われます。世の中に流通している本にも、ひとつひとつ制作のストーリーがあることに思いをはせると、本が生まれることへの感謝の気持ちが生まれました。

今回、同人誌最大の醍醐味である対面販売の機会がなくなったのは残念ですが、同人誌づくりは楽しかったです。技術書典に関心のある人は、ぜひ何か作ってみてはいかがでしょうか。複数人で書くのが気楽でよいとおもいます。丸ごと1冊書ける人でも、デザインや校正など他者の協力をもらいながら作ることを強くおすすめします。その方が完成度も上がりますし、なによりつくる過程を楽しめますから。

制作プロセスについては、別途エントリーをあげる予定です。

『Dear Data』日常生活のデータが綴られたビジュアルな文通

2016年の書きかけの書評。ブログにアップしていたとおもっていたけど、アップしていなかったようなので、ここにあげておく。


Lupi, Giorgia, and Stefanie Posavec. Dear data

Dear Data
Dear Data

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Giorgia Lupi Stefanie Posavec
Princeton Architectural Press
売り上げランキング: 30,680

↑米国版

Dear Data
Dear Data

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売り上げランキング: 1,992,209

↑英国版

本書は、ニューヨークとロンドンに住む同い年の女性デザイナー、ジョージア・ルピとステファニー・ポザベックのふたりが1年間文通した記録だ。葉書の内容は、文字で書かれたメッセージではなくデータをあらわすグラフィック。52週にわたって綴られた量に圧倒されるだけでなく、毎週あらたな表現にチャレンジしていることに驚かされる。本書のさいごに「そんなに難しくないよ」と、つくる手順が紹介されているが、しっかり取り組むとこれだけで1週間が終わってしまいそうだ。

  1. データ収集家として世界を見よう
  2. 問いからはじめよう
  3. データを集めよう
  4. データをじっくり見よう
  5. まとめて分類分けしよう
  6. メイン・ストーリーを見つけよう
  7. ビジュアルをひらめいて、自分らしいボキャブラリーをつくろう
  8. 最初のアイディアでスケッチして実験しよう
  9. 最終版のスケッチを描こう
  10. 凡例を描こう
  11. 最後に投函しよう

交わされた葉書はすべてWebサイトで見ることができるが、細部までじっくり眺めることができる本をおすすめする。

本書は、ジョージアとステファニーが、日常生活の細かなことを相手に見せながら仲良くなった物語です。といってもカフェやバー、ソーシャルメディアでおしゃべりしたのではありません。その代わり、時代遅れの通信に変わった工夫をほどこしました。1年のあいだ毎週ポストカードを送りあい、その週の出来事を相手に説明するのです。出来事を「書く」のではなく「描く」ことにしました。すべての出来事は描かずに毎週テーマを決めました。

毎週月曜日、その週の自分に関するデータを集めるテーマを決めます。文句を言う頻度、嫉妬にかられる回数、いつだれの身体と接触するか、聴こえてくる音。葉書サイズの紙に、こうしたデータをあらわすスケッチを描き、ステファニーは「ポストボックス」(英国)に、ジョージアは「メールボックス」(米国)に投函しました。

[……]私たちは「ビッグデータ」の時代に生きていると言われています。そこではアルゴリズムと計算が普遍的な問いへの新たな鍵であり、無数のアプリケーションが私たちのデータを発見し、収集し、ビジュアライズすることで、人間を超人にしようとしてくれます。私たちは、もっとゆっくり、よりアナログな方法でデータに近づくことにしました。「Dear Data」は、自分を定量化するプロジェクトではなく、「パーソナル・ドキュメンタリー」だと考えています。これは微妙だけれど決定的な違いです。ただ効率化するためにデータを使うのではなく、より人間的になり、他者と深いレベルでつながるために、データを使うことができると思うのです。

(はじめに)

二人はビッグデータ時代の功利的なデータ活用が盛んに広まっている潮流に抗い、あえてデータをテーマにしたパーソナルなドキュメンタリーに取り組んでいることがわかる。もっとも彼女たち自身はデザイナーとして、ふだん商業的なプロジェクトに携わっているはずだ。そうした合間に、みずからの好奇心とスキルをいかしながら個人的な表現活動を続けている。そのことに表現者としての矜持を感じた。

書誌情報

Lupi, Giorgia, and Stefanie Posavec. 2016. Dear data. New York : Princeton Architectural Press.
Lupi, Giorgia, and Stefanie Posavec. 2016. Dear data. London: Particular Books.

目次

  • 序文 Maria Popova(米国版のみ)
  • はじめに
  • 本文

リンク

ビデオ

Eyeo 2015 – Giorgia Lupi and Stefanie Posavec from Eyeo Festival // INSTINT on Vimeo.

2018-10-13「2018年度日本デザイン学会秋季企画大会」で発表しました

2018年10月12〜14日に九州大学大橋キャンパスで開催された「2018年度日本デザイン学会秋季企画大会」で、2件の発表をしました。

1つ目は、10月13日のライトニングトーク発表です。

杉本達應「『仮想書棚』の試み」

2つ目は、10月14日の第5支部研究発表会の口頭発表です。

杉本達應「データ可視化の制作プロセスの共有を支援するツールの検討:『データ駆動型デザイン』を学習する技術的環境」

2018-09-16 「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催しました

2018年9月16日、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターで「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催しました。共催の「ももち浜TECHカフェ」さんに博多駅至近の会場をご提供いただきました。

開催概要
2018-09-16 「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催します – lab.sugimototatsuo.com

多様な領域からご参加いただき、ありがとうございました。昨年から主宰しているDxD研究会をはじめて公開しました。データビジュアライゼーション領域で活動されている山辺さん、矢崎さんをお招きして、それぞれの実践事例など話題提供いただきました。当日は時間が足りず、参加者をまじえた十分なディスカッションができなかったことを反省しています。またデータビジュアライゼーションをテーマのイベントが開催できればと思っています。

(写真:牛島清豪さん、矢崎裕一さん、杉本達應)

当日の発表資料を置いておきます。

データビジュアライゼーションの制作方法を学ぶ
杉本達應

アート+サイエンス、ビジュアライゼーションの現在―産学官連携と実践
山辺真幸さん

参加者限定で共有しました。

見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ
矢崎裕一さん

こちらのリンクをご覧ください。

2018-09-16 「DxD at Fukuoka データビジュアライゼーションを語る会」を開催します

2018年9月16日、福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センターでデータビジュアライゼーションに関するトークイベントを開催します。
杉本達應研究室と「ももち浜TECHカフェ」の共催です。

参加申し込みはこちらから。
https://tech-cafe.connpass.com/event/98246/

近年、多様なデータを起点にチャートなどの視覚的表現を生成する「データビジュアライゼーション」が注目されています。この領域をテーマにした「DxD研究会」が福岡で初のトークイベントを開催します。データビジュアライゼーションの教育、実践について話題提供し、この分野に興味をもつみなさんと意見交換します。

福岡県Ruby・コンテンツ産業振興センター 5階プレゼンルーム
福岡市博多区博多駅東1丁目17-1(福岡県福岡東総合庁舎5階)
※博多駅筑紫口から徒歩5分
参加無料
イベントページでお申込みください。受付の際に名刺を頂戴します。

プログラム

データビジュアライゼーションの制作方法を学ぶ
杉本達應(佐賀大学芸術地域デザイン学部 准教授)
大量のデータが行き交う現在、デザインで学ぶべきものが大きく変化しました。初学者に向けた「可視化のガイドライン」(作成中)を紹介します。

アート+サイエンス、ビジュアライゼーションの現在―産学官連携と実践
山辺真幸(多摩美術大学情報デザイン学科 非常勤講師/慶應塾大学大学院 政策・メディア研究科 後期博士課程)
アートとサイエンスにまたがる2つの「データビジュアライズ」の現在について、大学・企業での取り組みや実践を交えて紹介します。

見えないものを見ようとして望遠鏡を覗き込んだ
矢崎裕一(Data Visualization Japan ファウンダー/Code For Tokyo 共同代表/多摩美術大学情報デザイン学科 非常勤講師)
人類が何を可視化してきたのか、過去の一部を駆け足で振り返りながら、今後の発展可能性について話題提供します。

主催 佐賀大学 芸術地域デザイン学部 杉本達應研究室
lab.sugimototatsuo.com
共催 システム開発技術カレッジ
(公益財団法人 福岡県産業・科学技術振興財団)

本研究会はJSPS科研費JP16K00462の助成を受けたものです。

2017-10-14 Geoアクティビティコンテストでデザイン賞を受賞しました

IMG_2863

2017年10月12日から14日まで、日本科学未来館で開催された「G空間EXPO 2017」Geoアクティビティコンテストに出展しました。

出展したのは、開発中のWebアプリ「DataMapp」(現在公開準備中)です。統計データを地図上にビジュアライズするシンプルなWebアプリです。13日のプレゼンテーション審査で評価いただき、「デザイン賞」を受賞しました。ありがたいことに、公開を期待する声など、多くの反響をいただきました。DataMappにご関心のある方は、杉本までご連絡ください。今後の動きをお知らせいたします。

これまでつながりのないイベントでしたが、人工衛星からドローン、GIS、AR、VRなど、地理空間情報にかんする産官学のさまざまな展示があり、勉強になりました。

展示では多くの地理空間情報業界のみなさんに声をかけていただきました。いただいたご意見やご感想は、つぎのように要約できるとおもいます。地図、とりわけ「主題図」と呼ばれる特定主題を詳細に表現した地図が、分析や意思決定に活用される場面が増えていて、データを効果的に表現するデザインの需要が高まっている。そのため、DataMappのようなデザイン主導の取り組みに期待しているということでした。

メインステージが展示場所にちかかったため、講演プログラムもたのしみました。

このコンテストに出展していたプロジェクトは、最優秀賞を受賞したドローンを利用した水田分析(なんと高校生!)など、いずれもとても面白かったです。わたしがとくに興味をひかれたのは、MIERUNE社の地図配信サービス「MIERUNE地図」です。これはOpenStreetMapをベースにした地図で、スタイルデザインが抜群に美しく、すばらしかったです。このような美しい地図が、Web上の地図の標準になってほしいなと感じました。

関連リンク
G空間EXPO2017|2017年10/12(木)・13(金)・14(土)開催!
【地図ウォッチ】 「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 – INTERNET Watch

Linked Open Data チャレンジ Japan 2016 ビジュアライゼーション部門 最優秀賞 受賞

先日発表された「LODチャレンジ2016」(Linked Open Data チャレンジ Japan 2016)のビジュアライゼーション部門で最優秀賞を受賞しました。LODチャレンジは、新たなデータづくり、データ公開、データ共有の仕掛けやオープンデータ活用のアイディア、アプリケーションなどを募集しているイベントです。実行委員会は有志のみなさんの組織です。

2017年3月11日に東京大学で開催された授賞式シンポジウムには、残念ながら参加できませんでしたが、後日たいへん立派な賞状を送っていただきました。「可視化法学」でアイディア部門最優秀賞を受賞された芝尾幸一郎さんはIAMAS時代からの友人でお会いたかったです。

受賞した作品「bibliomaps ビブリオマップ神戸版」は、地名にまつわる文芸作品を地図にマッピングし、地名が登場する前後の文脈を原稿用紙風にビジュアライズした鑑賞型のWebアプリケーションです。文学館の展示のように、作家が生きていた時代や場所、執筆風景を想像できるように工夫しました。昨年開催された神戸市とバルセロナ市の国際連携ワークショップ「WORLD DATA VIZ CHALLENGE 2016」の参加をきっかけに制作したものです。まだ粗削りなので、ブラッシュアップしたいなとおもっています。

賞状に書かれていたコメントをご紹介します。

オープンで良質な日本語のテキストである青空文庫を対象にして、地名を軸に構築したデータを趣のある作品としてまとめている点が素晴らしいです。オープンデータの活用という観点と、強く印象に残るビジュアルという観点の両方において高く評価いたしました。
さらにDBpedia Japaneseなど他のオープンデータと繋いで別の文脈を可視化するなどの発展性も期待できます。


「データの見える化による地域課題解決ワークショップ」第2回で話題提供しました

2016年11月25日、佐賀大学で開催された「データの見える化による地域課題解決ワークショップ」第2回で、第1回にひきつづき話題提供しました。

Code for Saga(コードフォーサガ) × 佐賀大学
「データの見える化で地域課題を解決しよう」第2回
http://code4saga.org/archives/385

私からは、データビジュアライゼーションのデザイン指針の考え方とツールを紹介しました。

後半のアイデアソンでは、いくつもの「見える化」のアイデアが発表されました。

わたしのスライドはこちらです。
杉本達應,2016,「データビジュアライゼーションのツール」。

Code for Sagaの牛島清豪さんによる活動レポートです。

データの見える化による…ワークショップ第2回目 | Code for Saga

World Data Viz Challenge 2016で発表しました

2016年10月15日・16日に、神戸市国際会議場で開催された「World Data Viz Challenge 2016」2nd Stageで発表しました。

World Data Viz Challenge 2016
神戸市、バルセロナ市連携まちづくり×ICTをテーマとする、データビジュアライズの国際ワークショップ & ツアー

バルセロナで開催された1st Stageには参加できませんでしたが、神戸で参加者のみなさんのプロジェクトを見れてよかったです。国際イベントと銘打たれていますが、スペインからの参加者がいなかったのは残念でした。

キーノートスピーチで、山道佳子さん(慶應義塾大学)によるバルセロナの都市計画の歴史にかんするお話があり興味深かったです。

バルセロナ市は、古くから計画的に都市が設計されていたことがわかりました。自動車が生まれる以前から、とても幅の広い道路をそなえていて、いまでは車道や広場に活用されているのには感服です。現在バルセロナ市は「City OS」というコンセプトを掲げスマートシティで先進的な取組をしています。その行政主導で総合的な「都市づくり」は、日本でいう「まちづくり」とはずいぶん様相がちがいます。ただ貪欲に新しい技術を都市づくりに活かしていくスピード感には学ぶところがありそうです。

神戸市がスマートシティに?連携するバルセロナ市の現在(矢崎裕一) – 個人 – Yahoo!ニュース

わたしが発表したのは、「街のイメージ」を感じることができる観賞型のWebアプリ「bibliomaps」です。青空文庫に収録されているテキストから、神戸にかんする地名が載っている作品をつぎつぎにブラウジングできます。地図上に、原稿用紙で表現しました。未公開ですが好評でしたので、そのうち公開できればとおもっています。

杉本達應,2016,「bibliomaps ビブリオマップ神戸版」(未公開)

2016年前半のビジュアライゼーション10選

この記事は、10 significant visualisation developments: January to June 2016 の日本語訳です。
原著者の許諾を得ています。転載はご遠慮ください。

2016年前半のビジュアライゼーション10選

By Andy Kirk | July 27, 2016
Translation: Tatsuo Sugimoto

1年の中間と最後の節目に、データビジュアライゼーション分野の過去半年間を振り返り、優れたプロジェクト集を編むことにしています。ここにあるのは、主要なプロジェクトやイベント、新規サイト、トレンド、パーソナリティー、概説で、この分野の発展に寄与するものだと感じたものです。

今年はじめに2015年後半のコレクションを発表しましたが、これから2016年前半を振り返りたいとおもいます。みなさんから、もっとも重要だと思われるプロジェクトの提案が寄せられるのを楽しみにしています。

それでは、いつものように順不同でいきます。

1. 気象スパイラル(Climate spirals)

レディング大学の気象科学者、エド・ホーキング(Ed Hawkins)博士による、1850年から現在にいたる世界規模の気温をアニメにした渦巻き状のプロットは、ソーシャルメディアで拡散しました。地球の気候が劇的に変化したことをもっとも納得させてくれる図解であるという人もいました。

2. PolicyVizポッドキャスト

ジョン・シュワビッシュ(Jon Schwabish)のPolicyVizポッドキャストは1年以上つづいています。とくにこの半年間は、この分野全般で頭角をあらわすのにふさわしい存在になったと感じます。ジョンは自然なカリスマ的ホストで、インタビューします。エピソードの中とその合間の両方に、すばらしいリズムを作りあげました。エピソード中は、スタイル、アングル、会話のペースを通じたリズムがあり、その合間には、この分野の多様性をあらゆる角度からカバーしようと連絡帳をたくみに手繰っているリズムがあるのです。例をあげるだけでも、エドワード・タフティ(Edward Tufte)やウィリアム・クリーブランド(William Cleveland)が登場するなど、彼はなかなか声を聞けない著名人にもたどりついています。約20〜25分間という長さは、60分近くの長さになりがちな根強い人気のData Storiesのエピソードへの、つかみやすいガイドになります。

3. リサ・ロスト(Lisa Rost)

リサは、ナイト=モジラ・オープンニュース(Knight-Mozilla OpenNews)のNPRビジュアルチーム内のフェローで、ワシントンDCを拠点にしています。ずっと前からリサと彼女の作品を知っていましたが、この半年間、ビジュアライゼーションの話題に対する貢献において、彼女はますます多作でよく見るようになりました。2つの対照的な成果があります。(1)12種類のツール12種類のライブラリを使いまったく同じチャートを制作する作業を比べた大変すばらしい作品と、(2)NPRにいる期間中、作品に関するブログを毎日書いていることです。わたしは、地球の大陸上にある有名な都市の緯度を並べたこの作品もとても気に入っています。

4. Polygraph

Polygraphは私にとって新しいものではありませんが、2016年のマット・ダニエルズ(Matt Daniels)たちのチームによる作品のクオリティと「興味深さ」(文字通りの意味)は本当にすばらしいとおもいます。Polygraphの目的は、「複雑な話題についてのカジュアルな議論をつくりだす作品」を提供することです。他の多くのサイトと異なるのは、わたしの見るところ、人気音楽の進化ハリウッドの男女格差と映画への影響時代を超えた不朽の名曲などの話題を探究する、ポピュラー文化関連の話題に分け入り、魅力的な一連のデータドリブンの調査へと駆り立てるコアな好奇心が明快にあることです。すばらしいData Storiesエピソード74では、マットの作品関する情報があり議論をしています。

5. レナ・グロージャー(Lena Groeger)の「ビジュアル・エビデンス」記事

わたしのサイトをくまなく読んでいる読者の方は、わたしがレナ・グロージャーのデータビズに関する考えの大ファンだと聞いても驚かないでしょう。以前の投稿(20142015)で彼女の作品を賞賛しましたし、今回ふたたび彼女のすぐれた新シリーズ、鋭い長文の「ビジュアル・エビデンス」記事(Flipboardコレクションはこちら)は、「日常生活のなかのデータとビジュアルデザイン」という関心のとてもニッチな断片の深みに達しています。やかんを火にかけ、紅茶をいれ、読む時間をとりましょう。

6. 上空のスパイ(Spies in the Skies)

これは、すでに受賞歴をもつデータジャーナリズムのプロジェクトで、Buzzfeedニュースのピーター・オールドハウス(Peter Aldhous)とチャールズ・セイフ(Charles Seife)によるものです。FBIと国土安全保障省(DHS)のエージェントが操縦する米国政府の航空機が、アメリカの都市の上空を定期的に航行しているパターンを分析しています。プロジェクトの記事が説明するように、「これまでほとんど世間の目にさらされることのなかった政府の空中監視活動の規模と広がりの実態を、BuzzFeedニュースがはじめて解明」しています。このプロジェクトは、データ処理の高度さ、調査の切り口の見事さ、ビジュアルのすばらしさなど、いくつも核心を突いていて、さまざまな評者から多くの称賛を受けています。

7. 月曜日のリニューアル(Makeover Monday)

これは、アンディ・クリーベル(Andy Kriebel)とアンディ・コトグレーブ(Andy Cotgreave)によるすばらしいコンセプトで、毎週のチャレンジをベースとしています。既存のプロジェクトからデータを取得し、ことなる潜在的な創造の道を探るリデザインを提案することをTableauコミュニティに呼びかけています。年間を通じて、作品のリデザインを制作するたいへん熱心な人々へと広がりました。重要なこととして、ここには無根拠な批判ではなく、全体にしっかりとした建設的な批評精神がありました。

8. 円グラフの研究

ロバート・コサラ(Robert Kosara)とドリュー・スカウ(Drew Skau)は円グラフに関する重要なあたらな研究を共同発表しました。「円グラフだって? 円グラフが悪で本当にダメな理由くらい全部分かってるよ」という人も中にはいるかもしれません。それでもこの研究はたいへん重要です。なぜなら、「円グラフをどうやって読みとるか知っていますか? 一般に言われているように、角度で読みとりますか、それとも円弧の長さで、もしかして面積でしょうか?」という質問に答えるにあたって、ロバートとドリューは、それが角度だという主張を裏付ける研究がなかったことを発見したからです。また、「円グラフを読みとる方法についての常識はほぼ確実に間違っていて、わたしたちが考えている以上に複雑」だったのです。2つの論文が、(1)「円弧、角度、面積:円グラフ、ドーナツグラフの個々のデータのエンコーディング」、 (2)「円グラフのバリエーションにおける判定エラー」を考察しています。

9. 変化を遂げるニューヨークタイムズのインタラクティブ

ニューヨーク・タイムズのだれかが話すと、みなさんは耳を傾け学びますが、アーチー・チェ(Archie Tse)がMalofiej 24〔インフォグラフィックス世界サミット〕で「なぜインタラクティブ要素を減らしたか」というタイトルでトークするときこそ、本当に耳を傾け学ぶときです。わたしはその場にいなかったので、最前線だと確証させてくれたこのトークを見ていません。しかしその内容から重要であることは明らかです。トークの主要な論点を繰り返すつもりはありません。自分でこれを吟味するだけで(とても短いです)、「ビジュアル・ストーリーテリングの3つのルール」が分かります。そしてNYTグラフィックスチームが、ユーザが明らかに要求し、応答するようなタイプの経験を作りあげるよう取り組みを変化させた主な方法も理解できるでしょう。

10. データジャーナリズムの「不都合な真実」

新聞をベースにしたビジュアルジャーナリズムの話題で、ワシントンポストのWonk Blogのクリストファー・イングラハム(Christopher Ingraham)によるこの記事は、まさに私の心に訴えかけてきました。それは、「うわべだけの権威と客観性」について語っています。数字やグラフィカルな表現は、読者によく伝わります。しかし、作り手であるわれわれは、何を見せ、何を入れ、どう見せるかについて多くの主観的な判断を挟んでいるのです。

そのほか

そのほかの2016年前半のハイライトです。

ケネディ・エリオット(Kennedy Elliott)のOpenVisトーク

ワシントンポストについて話していたら、あと2つの彼らの作品や同僚がありました。第1に、このとても興味深いトークと記事で、ケネディは、「人間の知覚に関する39の研究」の調査を振り返り議論しています。

NFLドラフトヒストリー

第2に(第3といったほうがいいかも)、このNFLドラフトヒストリーの分析は、信じられないほど詳細でカスタマイズ可能で変化に富んでいます。

FTのアプローチの変化

すでに昨年の半年間レビューでFT〔フィナンシャル・タイムズ〕が発表するビジュアライゼーション作品の変化と品質については指摘していましたが、これは本当に素敵な報告です。特にアラン・スミス(Alan Smith)がこのチームに入ってから数ヶ月で、この変化が起きました。

Chriming

枝、木、森のメタファーで鳥の鳴き声をビジュアライズしたソウルのスー・コ(Sook Ko)の美しい作品。

ナディー・ブレマー(Nadieh Bremer)

上で紹介したリサと同じく、ナディーは、(自己紹介によれば)「天文学者からデータサイエンティストそして独学のデータビジュアライゼーションデザイナー」です。魅力的なビジュアルプロジェクトやチュートリアル、トーク、リソースレビューを幅広く手がけていて、今年とてもアクティブでよく目にします。

WSJのハミルトン

ミュージカル『ハミルトン』についての本当にイノベーティブな作品で、「音楽史上もっとも密で複雑な韻を踏んでいる歌詞が実際どのようになっているか」を調べています。

ニコラス・ルージュ(Nicholas Rougeux)

ニコラスもデザイナーで、この数ヶ月わたしのアンテナにいつもひっかかっています。彼は面白く独創的で、非常にエレガントなビジュアライゼーションを探究しています。

Flag Stories

理論的にはとてもシンプルなテーマですが、たいへん素敵で密度の濃い、世界中の国旗の属性を調査したビジュアル分析が並んでいます。デンマークのスタジオferdios制作。

タマラ・マンツナー(Tamara Munzner)のあらたなブログ

タマラがブログを始めたおかげで、世の中よくなりました。

著者紹介

アンディ・カーク(Andy Kirk)は、イギリス在住のフリーランスのデータビジュアライゼーションの専門家でトレーナーです。
www.visualisingdata.com

Data Visualisation: A Handbook for Data Driven Design
Andy Kirk
SAGE Publications Ltd
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