2017-10-14 Geoアクティビティコンテストでデザイン賞を受賞しました

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2017年10月12日から14日まで、日本科学未来館で開催された「G空間EXPO 2017」Geoアクティビティコンテストに出展しました。

出展したのは、開発中のWebアプリ「DataMapp」(現在公開準備中)です。統計データを地図上にビジュアライズするシンプルなWebアプリです。13日のプレゼンテーション審査で評価いただき、「デザイン賞」を受賞しました。ありがたいことに、公開を期待する声など、多くの反響をいただきました。DataMappにご関心のある方は、杉本までご連絡ください。今後の動きをお知らせいたします。

これまでつながりのないイベントでしたが、人工衛星からドローン、GIS、AR、VRなど、地理空間情報にかんする産官学のさまざまな展示があり、勉強になりました。

展示では多くの地理空間情報業界のみなさんに声をかけていただきました。いただいたご意見やご感想は、つぎのように要約できるとおもいます。地図、とりわけ「主題図」と呼ばれる特定主題を詳細に表現した地図が、分析や意思決定に活用される場面が増えていて、データを効果的に表現するデザインの需要が高まっている。そのため、DataMappのようなデザイン主導の取り組みに期待しているということでした。

メインステージが展示場所にちかかったため、講演プログラムもたのしみました。

このコンテストに出展していたプロジェクトは、最優秀賞を受賞したドローンを利用した水田分析(なんと高校生!)など、いずれもとても面白かったです。わたしがとくに興味をひかれたのは、MIERUNE社の地図配信サービス「MIERUNE地図」です。これはOpenStreetMapをベースにした地図で、スタイルデザインが抜群に美しく、すばらしかったです。このような美しい地図が、Web上の地図の標準になってほしいなと感じました。

関連リンク
G空間EXPO2017|2017年10/12(木)・13(金)・14(土)開催!
【地図ウォッチ】 「Geoアクティビティコンテスト」最優秀賞は、愛媛・伊予農業高校の2年生 – INTERNET Watch

2017-09-23 SMAART講義・ワークショップ「佐賀県の文化芸術情報を伝える」を開催しました

2017年9月23日、佐賀大学附属図書館で、SMAART講義・ワークショップ「佐賀県の文化芸術情報を伝える」を開催しました。

9/23 佐賀県の文化芸術情報を伝える – SMAART Saga Mobile Academy of Art

SMAART[Saga Mobile Academy of Art: サガモバイル・アカデミー・オブ・アート]は、佐賀大学芸術地域デザイン学部が主催するアートマネジメント人材育成事業です。杉本は事務局のメンバーとして参加しています。
SMAART Saga Mobile Academy of Art – 芸術を通した地域創生人材育成~肥前窯業圏のやきものと茶文化をめぐるアートカフェとネットワークづくり

この日は、講義とワークショップを企画し実施しました。

前半の講義では、3名の外部講師の方をお招きしご登壇いただきました。

藤生雄一郎さん(佐賀新聞社)からは、文化面を担当されている立場から、効果的なプレスリリースの発信方法について具体的なアドバイスをいただきました。

田原新司郎さん(Tokyo Art Beat)からは、現代アート情報のポータルサイトの運営の裏側をご紹介いただきました。

倉成英俊さん(電通)からは、佐賀県のプロモーションビデオや、有田焼のプロモーション事業など、多くの企画事例とのその背景にある考え方を紹介していただきました。

講師の所属する業界は、地方新聞社、アート情報サイト、広告代理店と三者三様でした。いずれも文化芸術の情報発信にかかわるテーマでしたが、異なる業種のプロフェッショナルによる講義を連続することで、この分野の状況を多角的に把握することができました。

後半のワークショップでは、牛島清豪さん(ローカルメディアラボ)の進行のもと、佐賀県の文化芸術情報を発信するポータルサイトづくりに向けて、アイディアを出し発表しました。牛島さんは、地域情報化やオープンデータの専門家でもありあすので、今後のポータルサイトづくりでもご協力いただきたいと考えています。

この日は受講生同士の交流を深めることもできました。冒頭に受講生全員の自己紹介の時間を設け、途中にFacebook受講生グループのガイダンスを開催。終了後は受講生、講師、事務局メンバーによる懇親会を開きました。

午前中から夜まで長時間のプログラムにおつきあいただいた受講生のみなさん、講師のみなさん、ありがとうございました。

2017-08-12 ワークショップ「○△□で自分の絵本をつくろう」

2017年8月12日、福岡アジア美術館で開催された「おいでよ!絵本ミュージアム2017」の会期中イベントのひとつとして、ワークショップ「○△□で自分の絵本をつくろう」を実施しました。

90分間のプログラムを2回実施し、それぞれ事前に申し込んだ約15名の4歳から8歳のこどもたちが参加しました。

○△□で自分の絵本をつくろう

このワークショップの内容は、佐賀大学芸術地域デザイン学部の2年生の学生チームと一緒につくりました。絵本ミュージアム会場で展示した「みんなでつくろう天の川」と同じく、まる・さんかく・しかくのスタンプと、オノマトペカードやオノマトペシールを使って絵本をつくります。

ワークショップのながれは以下の通りです。

  • シンプルなかたち、ことばの絵本の紹介
  • 全体共通のお題(オノマトペ)をスタンプを押して表現してみる
  • それぞれのグループでひとり1枚オノマトペカードをひく
  • グループのメンバーがひいたオノマトペのシール(3〜5枚)を絵本のページにはる
  • スタンプでおはなしを表現する
  • おはなし、タイトル、なまえをペンで書く
  • 完成した絵本をみんなに発表する

今回の絵本づくりは、細かい物語がなくてもかまわない、とてもプリミティブな絵本です。ことば、色、かたちからひろがるイメージをふくらませ「おはなし」をつくって発表しあいました。短い時間でしたが、シンプルな条件のなかで、じぶんのオリジナルの絵本をつくるおもしろさを味わってくれたらうれしいです。

オノマトペシールをはっていきます。
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スタンプで絵を描きます。
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絵本ができたよ

完成記念写真。

第1回
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第2回
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ワークショップ参加者のおうちのかたへ
写真をおわけしますので、お子さまのお名前・年齢、メールアドレスをそえて、sugi2000◎cc.saga-u.ac.jp(◎はアットマーク)までご連絡ください。

学生スタッフ

学生スタッフは、事前のプログラムづくりや準備だけでなく、当日の進行補助、記録を担当してくれました。どうもありがとう。

岩元麻衣花、岡山空知、小林萌、高橋健悟、藤紘和、久山佳音、山林満帆(佐賀大学芸術地域デザイン学部2年生)

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ありがとうございました

このワークショップを開催するにあたり、NPO法人子ども文化コミュニティのみなさんには大変お世話になりました。またワークショップに先立ち、佐賀大学でおこなったプレ実践では、同僚の井川健先生ご家族、土屋貴哉先生ご家族にご協力いただきました。感謝いたします。

ワークショップで紹介した絵本

あおくんときいろちゃん (至光社国際版絵本)
レオ・レオーニ
至光社
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もこもこもこ (ぽっぽライブラリ みるみる絵本)
谷川 俊太郎
文研出版
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「みんなでつくろう天の川」技術メモ

こちらは、「みんなでつくろう天の川」開発の技術メモです。

最初は、できるだけ小さなプロジェクトにするつもりで開発をスタートしました。まずはProcessing、Webサイトでの閲覧も考慮してP5.jsに移行し、さらにスピードが足りずにThree.jsに行き着きました。ハードウェアは、Raspberry Piも検討しましたが、スキャナドライバの安定性からMacを利用。

スピードとWebサイトとの連動を考慮すると徐々に規模が大きくなり、最終的にはNode.js + Expressを中心としたつぎのような構成になりました。学習しながら、増築していったセルフビルド建築のようなものなので、いびつな構成だとおもいます。

今回の開発のおかげで、すこししか触っていなかったNode.jsの理解がすすみました。Nodeには膨大なモジュール群があるので、それらを組み合わせる「ブロック工作」の感覚でWebアプリを開発することができました。

マシン

  1. Mac mini – スキャナドライバ、アップロード
    • Scansnap – スキャナ
  2. MacBook Pro – プロジェクション、Webクライアント
  3. VPS – Webサーバ

マシンは冗長性をもたせています。基本的には1−2−3の3台構成ですが、故障時にそなえて、1、2、1-2、1-3、2-3でも展示可能になっています。

サーバ

  • Python3 + OpenCV3 – 画像認識
  • nginx – Webサーバ
  • Node.js – サーバサイドJavaScript
    • Express – Webアプリケーション・フレームワーク
    • Socket.IO – リアルタイムアプリ・フレームワーク
    • sharp – 画像変換
    • moment – 日付時刻処理
    • pm2 – Nodeの常時起動と監視 (Keymetrics)
  • MongoDB + Mongoose – データベース

フロントエンド

  • JavaScriptライブラリいろいろ
    • three.js
    • stats.js
    • dat-gui
    • tween.js
    • d3.js
    • moment
    • tinycolor
  • Foundation – CSSフレームワーク

ローカルマシン(スキャン用)

  • Node.js – アップロード用アプリ
    • chokidar – フォルダ監視
    • pm2 – アプリの常時起動
  • httpie – APIリクエスト

ローカルマシン(展示用)

  • Electron – 展示専用アプリ開発(マルチプロジェクション、リモート操作のウィンドウ)

https://gyazo.com/ff7eedf22bbec129a20e2be5414091fa

エディタ

  • Atom

バージョン管理(というよりもリポジトリとして)

  • github

「おいでよ!絵本ミュージアム2017」で展示しました

2017年7月から8月にかけて福岡アジア美術館で開催された企画展「おいでよ!絵本ミュージアム2017」で、参加型デジタルコンテンツ「みんなでつくろう天の川」を展示しました。絵本ミュージアムは、福岡の夏休みの恒例行事としてすっかり定着しています。開催10周年を記念した今年のテーマは、「いっしょに」。絵本や展覧会も多くの人びとがかかわって完成しています。仲間と一緒につくりあげる楽しさを伝えたいという気持ちがこめられています。

会場では、絵本の世界が実物大で再現されて展示されています。アーティスト・角孝政さんによる立体造形や、効果的な照明がすばらしかったです。「○△□の森」という幾何学図形をつかった絵本や、真っ暗な部屋の点字絵本コーナーも楽しかったです。「みんなでつくろう天の川」は、展示スペース後半の天吊スクリーンに映し出されています。絵本の世界感を再現した展示ほどの存在感はありませんが、多くの子どもたちが楽しんでくれました。

「みんなでつくろう天の川」のなりたち

「みんなでつくろう天の川」は、絵本ミュージアム・プロデューサーの高宮由美子さんと「絵本ミュージアム」ならではのデジタルコンテンツについて数ヶ月にわたって相談しながら新たに制作したものです。

絵本は、物質としては絵や物語がおさめられた紙の本です。美術品のような美しさがある一方で、大量生産された商品という側面ももちあわせています。とはいえ、この絵本のことを思い出すときには、本という物質の質感だけではなく、ページのデザイン、文字のならび、それを読んだ時代や場所や朗読する声、ページをめくる感覚、思い浮かべる情景などが浮かび上がってきます。つまり絵本は、たくさん流通している複製物でありながらも、きわめて個人的で身体に刻まれた記憶がからみあっている、複合的な媒体だといえるのです。このような絵本をあつかう「絵本ミュージアム」では、なによりも絵本をじっくり読んだり、イメージをふくらませたりすることを大切にしたいと考えました。つまり、絵本を読む落ち着いた空間をこわさないように、いかにもデジタルっぽいギラギラした質感を表に出さないようにする必要がありました。

結果として、まる・さんかく・しかくというシンプルな形状のスタンプとポストカード、リアルタイムに生成するアニメーションを投影するスクリーンで構成しました。参加者は、好きなパターンをスタンプで描き、名前を書いたカードをスキャンします。スキャンしたカードは、円弧状のスクリーンの夜空に浮かびあがり、スタンプの形状が夜空の星となって、天の川ができあがります。背景やときおり登場するキャラクターには、今回の絵本ミュージアムの特集作家である絵本作家たちもとみちこさんの絵をつかっています。

ちなみに、たちもとさんの貴重な原画データを見ることができ、たちもとさんなりの画風や、細やかな作り込みの工夫に大変感動しました。

「みんなでつくろう天の川」でたいせつにしたこと

「みんなでつくろう天の川」でたいせつにしたポイントは以下のとおりです。

  1. 手触り感とともにつくる
    デジタルコンテンツといっても、手で触れるスタンプと紙を使いました。絵本は物語そのものだけでなく、本の表紙やページの手触りも感じます。そうした触感に訴える創作をはじめにやってもらいました。
  2. いっしょにつくる
    展覧会のテーマ「いっしょに」に合わせ、たくさんの参加者が参加して、はじめて夜空に天の川ができるようなものに仕上げました。会場ではたくさんの子どもたちが自由に動いています。自由参加であっても結果的に協同創作に参加できるような工夫をほどこしました。
  3. 控えめな演出
    この展示は、テクノロジーを見せることが目的ではありません。「絵本ミュージアム」の絵本を読むスペースに設置されることから、できるだけ来場者が絵本を読むことに集中できるように、視覚的な演出は最小限におさえました。星のうごきはゆっくりで、背景はさらにゆっくりうごいています。まるで流れ星のように、ときどきキャラクターがあらわれます。スクリーンをぼんやりずっと見ている人だけにおくるささやかなプレゼントです。
  4. 帰宅しても楽しめる
    ポストカードは持ちかえることができます。またスキャンしたカードを特設Webサイトにアーカイブし、会場だけでなく帰宅後にスマホやPCからでも楽しめるようにしました。
  5. いつでも動作している
    展覧会の会期は、32日間無休です。つねに展示がおこなわれていて、システムが落ちないように、使用する道具の耐久性やシステムの堅牢性を保つよう工夫しました。開発したシステムについては、別記事の技術メモに書きとめます。

謝辞

「みんなでつくろう天の川」をつくるさい、次の方がたにとくにお世話になりました。

企画、プロデュースでは、子ども文化コミュニティの高宮由美子さん、藤野惠介さん。西日本新聞社の笠井優さん。NTT西日本グループの上田智子さん、小原由輝子さん、NTTコミュニケーション科学基礎研究所のみなさん。

会場設計・施工などでは、環境デザイン機構の岡大輔さん、アラタデザイン一級建築士事務所の荒田寛さん、ステージクルー・ネットワークの糸山義則さん、ハダ工芸社のみなさん、デザイナーのマツダヒロチカさん。

スタンプ制作では、井川健先生と藤田加奈子さん(佐賀大学)、ワークショップ学生チームのみなさん(佐賀大学芸術地域デザイン学部)、FabLab Sagaの陣内和宏さん、ツキネコのみなさん。ポストカード印刷はプリントパックさん。

会場運営では、子ども文化コミュニティのみなさん、会場スタッフのみなさん。

多くのみなさんの協力で展示が成り立ちました。1回目の絵本ミュージアムでのムービーカード・ワークショップ以来、ふたたび絵本ミュージアムで、こどもたちといっしょに創作体験するることができることができ、とてもうれしくおもっています。このような機会をいただき感謝いたします。

みんなでつくろう天の川

企画・制作:高宮由美子、杉本達應
システム開発:杉本達應
イラストレーション:たちもとみちこ

開催概要

おいでよ!絵本ミュージアム2017
会期:2017年7月20日-8月20日
会場:福岡アジア美術館
主催:福岡アジア美術館、西日本新聞社、TNCテレビ西日本、NPO法人子ども文化コミュニティ
http://www.kodomo-abc.org/ehonmuseum2017/

関連リンク

おもな展示絵本

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たちもとみちこ・作/絵
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2017-07-01 FOSS4G 2017 Hokkaido コアデイで発表しました

2017年7月1日、ACU-A(札幌市)で開催された「FOSS4G 2017 Hokkaido コアデイ」で発表しました。FOSS4Gとは、QGISやPostGISなどオープンソースの地理情報技術群のことを指し、それらの開発者、ユーザのコミュニティのこともあらわしています。

FOSS4G 2017 Hokkaido
http://foss4g.hokkaido.jp/

わたしのスライドはこちらです。昨年つくった「bibliomaps」の開発のプロセスを紹介しました。
杉本達應,2017,「文芸テキストを地図上にビジュアライズする観賞型Webアプリ「bibliomaps」の開発」。

札幌で発表するので、北海道版もつくりました。ツールを再利用できたので効率的につくることができました。

みなさん発表がとてもうまく、どれも興味ぶかくききました。

なかでも、「オープンな公共交通データが作り出す未来」伊藤昌毅さん(東大)が大変おもしろかったので、Code for SagaのFacebookグループでもシェアしました。

公共交通データの世界的なデファクトスタンダードであるGTFS形式をベースにした「標準的なバス情報フォーマット」が今年公開され、全国各地でデータ公開の取り組みが始まっているそうです。地域によって、事業者、行政、市民など作り手はさまざま。

乗り換えアプリでは、路線バスやコミュニティバスがうまく検索できませんが、これからデータ公開が進めば、ずいぶん使い勝手がよくなりそうです。

佐賀も複数のバス会社が乗り入れているので、ぜひ標準フォーマットの公開がすすむといいなとおもいました。Code forで取り組むにもよいテーマかもしれません。

参考になるブログ記事はこちらです。
公共交通オープンデータ 能美市の取り組みとその未来 – niyalistのブログ

2017-04-24 地域デザイン基礎(フィールドワーク)発表

2017年4月24日、「地域デザイン基礎(フィールドワーク)」の発表がありました。これは芸術地域デザイン学部の1年生のコア科目・通称「共通基礎」の課題のひとつです。前期6つの課題を連続してこなしますが、今年度の初回の課題はフィールドワークでした。

基本的には入学後1か月もたたないなか、それぞれしっかりした発表がありよかったです。ただし、どうしても伝えたいことがあったのでメモしておきます。

1.主題を明確に伝える

今回の課題は、「佐賀の魅力が感じられるまちあるきコースの提案」です。主題は、このまちあるきコースのテーマやコンセプト、そしてコース提案の詳細です。発表では、各班が制作したイラストマップの内容を中心に述べれば十分伝わります。

まちあるきには、つぎのような情報が必要不可欠です。距離、所要時間、スタート地点やゴール地点、コースで経由する場所と場所の距離や歩き方のポイント、迷いやすい場所の目印など。

まちあるきに直接関係ないことは、今回の主題ではありません。すなわちプレゼンテーションの工夫(フォント、色、アニメーション、映像、音楽、寸劇、キャラクター、お笑いなどなど…)は、今回は求められていません。プレゼンの工夫はしなくてよい、といってるわけではありません。今回の発表のそれぞれの工夫は、主題を伝えるためにほんとうに必要なのか、よく吟味してほしいのです。どうしても必要なもの以外は、そぎ落とすべきです。

2.発表は臨機応変に

同じテーマで20グループも発表しますから、内容が重複してしまうことは仕方ありません(=事前に想定できます)。まえのグループの発表と同じ内容があれば、原稿を棒読みするのではなく、思いきって省略したり、ほかの追加情報を発表してかまいません。なぜなら聴衆は、まえの発表をすでに聞いているからです。発表するときは、聴衆の気持ちをよく考え、機転をきかせましょう。恵比寿、河童伝説など、一言一句同じ文言を何度も聞かされるのは耐えられません。

発表機材のトラブルなどがあっても、落ち着いて時間内に発表を終わらせるようにしましょう。発表が止まってしまうのは、プレゼン資料に依存しすぎているからです。発表時間はかぎられているのですから、けっして何分も待たせてはいけません。

聴衆がききたいことは、まちあるきの詳細です。笑いたいわけではないので、既存の番組やゲームのパロディ仕立てなど、やみくもに笑いをとる必要はありません。主題からはなれた発表は、たとえその場が盛り上がっても、主題を知りたい聴衆にとってはむしろ邪魔な演出です。

3.他人の創作物をぞんざいに扱わない

発表中、既存の音楽や効果音がたくさん使われていて、たいへん気になりました。音楽は今回の主題ではないので、発表に音楽は必要ないのです。とくに既存の音楽を使うのは、いくつか問題があります。

第一に、著作権的な問題です。参考文献として書籍の情報は明記していましたよね。大学の授業内の発表なので細かいことは問われないとおもいますが、他人の創作物を利用したのなら、せめて同様にクレジット(曲名等)を表記すべきです。

第二に、著作者への敬意の問題です。芸術地域デザイン学部は、表現者、作り手、送り手、美術や文化財の保存にかかわる人を育成する機関です。なによりも私たちがまず、表現する人たちをリスペクトする態度を身につけなければなりません。テレビ番組をみると、クレジット表記なしに自由にBGMや効果音を使っているので、おなじ感覚なのかもしれませんが、他人の音楽を気軽に利用することは厳に慎むべきです。

既存の創作物を切り貼りして何となく見映えのよいものをつくりあげることは、ほんとうのクリエイティブではなく、クリエイティブを殺していることに気がついてほしい。すくなくともわたしは、このような無自覚にクリエイティブの尊厳を毀損している発表演出をまったく評価しません。

以上の指摘は、入学したての1年生には厳しすぎるかもしれません。繰り返しになりますが、入学1か月以内で楽しく発表できていたのはよかったです。これからも頑張ってください。

Linked Open Data チャレンジ Japan 2016 ビジュアライゼーション部門 最優秀賞 受賞

先日発表された「LODチャレンジ2016」(Linked Open Data チャレンジ Japan 2016)のビジュアライゼーション部門で最優秀賞を受賞しました。LODチャレンジは、新たなデータづくり、データ公開、データ共有の仕掛けやオープンデータ活用のアイディア、アプリケーションなどを募集しているイベントです。実行委員会は有志のみなさんの組織です。

2017年3月11日に東京大学で開催された授賞式シンポジウムには、残念ながら参加できませんでしたが、後日たいへん立派な賞状を送っていただきました。「可視化法学」でアイディア部門最優秀賞を受賞された芝尾幸一郎さんはIAMAS時代からの友人でお会いたかったです。

受賞した作品「bibliomaps ビブリオマップ神戸版」は、地名にまつわる文芸作品を地図にマッピングし、地名が登場する前後の文脈を原稿用紙風にビジュアライズした鑑賞型のWebアプリケーションです。文学館の展示のように、作家が生きていた時代や場所、執筆風景を想像できるように工夫しました。昨年開催された神戸市とバルセロナ市の国際連携ワークショップ「WORLD DATA VIZ CHALLENGE 2016」の参加をきっかけに制作したものです。まだ粗削りなので、ブラッシュアップしたいなとおもっています。

賞状に書かれていたコメントをご紹介します。

オープンで良質な日本語のテキストである青空文庫を対象にして、地名を軸に構築したデータを趣のある作品としてまとめている点が素晴らしいです。オープンデータの活用という観点と、強く印象に残るビジュアルという観点の両方において高く評価いたしました。
さらにDBpedia Japaneseなど他のオープンデータと繋いで別の文脈を可視化するなどの発展性も期待できます。


2017-01-20 クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2 「見えない世界をつかまえる」

2017年1月20日(金)、佐賀市のアートスペースCASASAGAで開催された「クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2」にゲストで参加しました。

キュレーターで同僚の花田伸一さんの異分野対談(無茶ぶり!)企画です。会場のCASASAGA(カーササガ)は、花田さんいわく「日本初のキュレーター・イン・レジデンス」だそうです。

初対面のお相手、新部さんから易経の考え方を教えていただいたり、実際に占っていただいたりと、縁のなかった易の世界を垣間見ることができ楽しかったです。

易は陰と陽の組み合わせで2進数の世界。それぞれのパターンから言葉が出てきますが、その解釈は易者や相談者に委ねられているんですね。出た結果をさらに変化させることもあるようです。ああ、これは2進数のビット反転だなあとか、コンピュータに精通している人ほどハマりそうです。

個人的には印象に残ったのは、「易はxxなんです」と明け透けに語っておられたこと。気になる方は中洲のスナックで占ってもらってください。

1/20(金)レポート
クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2
「見えない世界をつかまえる」
ゲスト:杉本達應(情報デザイン)+新部健太郎(中国武術・易筮家)
 まったく異なるジャンルのゲストを招いてクロストークを行う“CASASAGAで逢いましょう”の第2回が1月20日(金)に開催された。ゲストは佐賀大学教員で情報デザインが専門の杉本達應氏、中国武術家であり易筮家(えきぜいか)である新部健太郎氏の2名をお迎えして、「見えない世界をつかまえる」と題してクロストークが行われた。東洋と西洋の世界の捉え方の類似や、人工知能の可能性など過去から現在まで歴史を横断・往復するような展開となった。
 杉本氏の実家は熊本県の美里町で駄菓子屋と印刷業を営んでいた。少年時代は、店の手伝いをして過ごし、振り返ってみると今の自分につながるようなルーツがあるかもしれないと話した。また自身がさまざまな分野を転々としながらも、よくわからないものに形を与え、世の中の物事を整理して伝える情報デザインに興味があるとのこと。
 新部氏は、中洲のスナックで出張占いをしており、杉本氏との意外な接点として、占いをする前の仕事はプログラムをしていた。易筮とは、いわゆる占いである。中国の殷から周にかけて成立した占いで、東洋の占いとしては、もっとも歴史の古いものだそう。占いとはそもそも、政治のための今を読むための重要なツールであった。今、目の前に起こっている混沌とした現象・情報を、どのように編集・カテゴライズし、自分(政治)に還元していくことが占いの原義であると、日本・中国での歴史の流れを踏まえ説明していただいた。
 易の占い方法は、言葉で説明するのはなかなか難しいが、単純化すると、陰の模様と陽の模様の組み合わせで、何通りもある中から偶然現れた目を、易での解釈と占う人に解釈を乗せて、2重になった解釈を伝えるというものである。これを易・占う人・占われる人との3者の構図での対話だとして、解説された。
 フリートークではAI(人工知能)の可能性や、易のオープンソース化、といった話題が話された。それらの話を通して著者が感じたのは、AIのように客観的事実としての情報だけで構築された行為に人間の共感、感動を呼ぶことは難しいのではないかということだ。易にしても、情報デザインにしても他者を動かすようなものには感情や主観をひとさじ入れることが不可欠だと話していたからだ。AIのありかたとして、人間の成り代わりではなく、人間を補完するようなパートナーとしてのあり方があるのではないかとトークの中で示された。
 今回のトークでは、世界の捉え方について非常に広い視点が飛び交い、過去から現在、はては未来まで包摂できるような、易の懐の深さに感嘆を抱くところとなった。また今回、筆者が印象に残ったのは、易の主観と客観の考え方で、フリートークにもあったように客観としてのAIとそれを解釈する主観としての人間の共存の方法を示唆しているようにも感じた。
 ちなみに蛇足ですが。トークの中頃で、新部氏による杉本氏の占いが行われた。杉本氏のお悩みは「今住んでいる家から引っ越すべきかどうか」。出た目は「一気にことを進めずに、こつこつ」「引っ越しはいずれの目標として、今ことを起こしてもむづかしいだろう」と出た。占いはまったく信じないと断言していた杉本氏は、果たしてこの結果を受け入れたのだろうか。
石原雅也(佐賀大学 地域デザイン研究科 修士1年)


クロストーク~CASASAGAで逢いましょう #2
「見えない世界をつかまえる」
ゲスト:杉本達應(情報デザイン)+新部健太郎(中国武術・易筮家)
佐賀市の間借りアートスペース「CASASAGA」で異分野同士のゲストを招いて繰り広げられるクロストーク企画。第2回は情報デザインと易経の出会い。見えないものを見る/見せるには? あるいは見えないままに取り扱えるか? そもそも世界を見るとは? 台本ナシの五里霧中トーク、光明は見えるか?
日時:2017年1月20日(金)19~21時
会場:CASASAGA(佐賀市神野東4-4-8)
モデレーター:花田伸一(キュレーター)
参加費:500円(1ドリンク付) 申込不要
P無(JR佐賀駅周辺にコインP有)
杉本達應/情報デザイン/佐賀大学芸術地域デザイン学部准教授。1975年熊本県生/佐賀市在住。2016年東京大学大学院学際情報学府博士課程単位取得退学。福山大学講師、札幌市立大学講師などを経て現職。デザイン、メディアアート、ワークショップデザイン、メディア研究などの複数領域を移りつつ活動。現在はデータ可視化の技術と文化に関心をもつ。共著書に『メディア技術史』(北樹出版)。共訳書に『Processing』『Generative Design』(ビー・エヌ・エヌ新社)。
新部健太郎/中国武術・易筮家。1977年函館生/福岡市在住。NPO法人「福岡気功の会」指導員。東京操体フォーラム相談役。壺中堂中国武術教室主人。来福以来、気功および中国伝統武術、易学を学ぶ。一読書人として東洋思想を漫遊しながら、中国武術「八卦掌」の教授、易経講座、中洲スナック占い師、九州大学国際部「JTW」プログラム外部講師などを遍歴。

藤代裕之,2017,『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』光文社.

ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか (光文社新書)
藤代 裕之
光文社 (2017-01-17)
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本書は日本のネットメディアのなかで、立ち位置がことなる5つのメディア、Yahoo! JAPAN、LINEニュース、スマートニュース、日本経済新聞電子版、NewsPicksの関係者を取材したルポルタージュだ。これを読むと各メディアの知らなかった内情がわかる。本書に描かれていることがらは、ネットメディアの業界関係者なら常識かもしれないが、利用者の立場からはなかなか知りえない裏舞台だ。各メディアの動向を知ることは、ネットメディアを漠然と利用していた者にとって、日ごろの情報収集を反省的にとらえることができ役に立った。ここに描かれているのはほんの一端なので、さらに細かい裏舞台を描いた骨太のルポルタージュを読みたくなった。

ここでは本書の内容にくわしく立ち入ることはしないが、いくつか気にとまったことをメモしておく。ヤフーの章では、筆者がYahoo! JAPAN社長への取材がかなわなかったことをYahoo!個人で批判して炎上した記事の顛末が書いてある。スマートニュース創業時のサービス設計の話は、スマホを前提としたプラットフォームを試行錯誤して構築してく様子がかいまみえ、とても興味深かった。本書に取り上げられている5社以外にも、日本にはネットメディアが多数ひしめきあっている。2017年のいま、日本のネットメディアを取材対象とするのなら、急成長しているBuzzFeed(バズフィード)日本版は外せないだろう。バズフィードについては第7章で触れられてはいるが、ほかのメディアと同じように掘り下げた中身を読みたい。

本書は、もともと『猫とジャーナリズム』というタイトルだったそうだ。この奇妙なタイトルはネットニュースの特徴をあらわしている。「猫」とはかわいい猫写真が並んでいるソフトニュースのこと、「ジャーナリズム」とは社会的な硬いニュースのことを指している。ソーシャルメディアでシェアされるソフトニュースはPV(=広告収入)を稼げる一方、既存メディアではトップ扱いの硬いニュースはネットではアクセスが低調で扱いが下がっている。こうした状況のなかでさまざまなニュースを取り扱うプラットフォームは、どの記事をどのように取り扱うかのさじ加減がきわめて重要になる。この編集作業こそがネットメディアの核心であり各サービスを性格づけている。この部分を経験豊富な人間がきめ細かく行うのか、アルゴリズムで最適化するのかは、それぞれのサービスによって様々だ。またそうした掲載指針をステートメントとして表明しているかどうかも各社違いが見られる。

この軸だけで十分だったようにおもえるこの本は、2016年の米大統領選での偽ニュース騒動を契機に「偽ニュース」を軸に編集しなおしたという。まるで話題のキーワードである「偽ニュース」がタイムリーに本になったようにみえる。とはいえ本書は「偽ニュース」問題が中心にあるのではなく、あくまで2016年時点における日本のネットメディア各社の編集・運営方針についての取材記である。

本書を読んでさらに知りたくなったことがある。それは、ネットメディアの重要なプレイヤーである「読者」と「広告」との関係だ。元新聞記者・ジャーナリストとしての筆者の視点は、当然記者や編集者といった「書き手」に立っているが、読者や広告によっても編集のあり方が変わりうるだろうからだ。

既存メディアとネットメディアでは読者の存在感が大きく違う。ここでいう読者は、単に記事を読むだけではなくその記事をもとにアクションを起こす人も含んでいる。ネットメディアの読者は、偽ニュースやステマにだまされる無知な被害者だけでなく、記事の死角を指摘し、疑惑を検証し、裏を読む者もいる。もちろん既存メディアの読者にもそうしたアクションを起こす人はいるが、可視化されていなかった。読者のなかにも特定の分野に長けた専門家がいることがはっきり分かるネットでは、既存メディアとはことなる読者とのつきあい方をしなければならない。もはや送り手とオーディエンスを一方向的につないだ単純なメディアの構図ではとらえきれない。

もう一つは広告だ。ネットメディアの編集は、アドテクと称される広告の配信技術や支払い方法などの「アーキテクチャ」に大きく左右されているように感じる。その証拠に、読者の利便性を損なうにもかかわらず、PV至上主義による広告枠の水増し、記事ページ分割、スライドショーなどが横行している。

わたしは、多くの読者が「偽ニュース」ではない良質なニュースを求めているし、アクセス数だけでは測りきれない「記事のクオリティ」が存在すると信じている。読者が知らなかった世界をひらき、それまで認識を変えてくれるような、はっとするような記事や記者には賞賛の声を送りたい。だけど今あるのは、SNSやソーシャルブックマークでの反射的な反応が盛り上がっては忘れ去られる。そこには皮肉や冷笑など、ネガティブな反応が必要以上に目立っている。紙の時代にはできなかった、個々の記事へのアクセスの詳細な分析から、読者の建設的な反応をかえす流れはつくれないだろうか。分析を広告収益を最大化するためだけに使うのでなく、記者への還元を最大化できるようになれば、結果的に記者・読者双方の満足度が向上するはずだ。これはネットメディア単体で解決できる問題ではなく、広告業界やSNS、検索エンジンのあり方も含めインターネットの情報流通をどうするかのビジョンにかかわる。もしかすると、このような仕組みづくりに、スマートニュースの共同創業者・鈴木健の仮想貨幣「PICSY」のような概念が使えるのかもしれないと妄想がふくらんだ。

書誌情報

藤代裕之,2017,『ネットメディア覇権戦争 偽ニュースはなぜ生まれたか』光文社.

目次

  • はじめに──「偽(フェイク)ニュース」が世界を動かす
  • 第1章 戦争前夜 偽ニュースはなぜ生まれたか
  • 第2章 王者ヤフーの反撃
  • 第3章 負け組LINEの再挑戦
  • 第4章 戦いのルールを変えたスマートニュース
  • 第5章 課金の攻防・日本経済新聞
  • 第6章 素人のメディア・ニューズピックス
  • 第7章 猫とジャーナリズムと偽ニュース
  • 著名ブロガー、ジャーナリストへのインタビュー
    • 山本一郎(投資家、ブロガー)
    • 石戸諭(ジャーナリスト、バズフィード日本版記者)
    • 新谷学(週刊文春編集長)

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